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NO,001 |
■ 世界文明における技術の千年史 生存の技術との対話に向けて
9月
著者:アーノルド・パーシー
監訳:林 武
訳:東 玲子
出版:株式会社 新評論
学生時代から歴史は好きな分野だった。卒業してからも比較的、日本の歴史に関する
書籍は読んでいるほうだと思う。しかし、世界史となるとあまり印象が無い。
特にユーラシア大陸の中世から近世にかけての歴史となると知りたいという欲求は有る
のだけれど、躊躇する分野でもある。従来の歴史書は、政治の史実に基づきその背景を
探る事が主とされている。行った事の無い土地に纏わる史実があまり頭の中に実感として
入ってこないという事もあるのだろうし、「政治」を主体とした時間軸と地域間の事件の絶対
量が多く、私の記憶能力の範囲を超えてしまっている事に起因するのではないかとも考え
たりもする。
要は煩わしさが勝ってしまうのである。
また、勝ち残った為政者の記録を基とした歴史書が「本当なのかな?」という疑問もある。
(この点は、日本史も同様だが・・・)
本書は、その時間軸と地域への影響を「政治」では無く「技術」というキーワードで千年間
の時代の変遷を世界規模で考えた「世界史」といえる。著者は、中国生まれのイギリス人。
現在はオックスフォード大学などの技術史公開講座の教授だそうである。
鉄製農機具の生産技術から始まる本書は、書簡などの緻密な分析と独自の手法による
比較により元来独自に生まれたと言われる西欧の技術が、主としてアジアで開発された
技術が時間と場所が異なった地域で再生される事例を紹介している。
この事は、本書が歴史を考える上での重要なファクターとして、「地域間の相互影響」を
考察する上で「技術移転の背景」といった新しい判断手法を提示している。
従来からある為政者の記録では無い大多数の庶民の行動を表わす技術普及度から歴史を
考察している。つまり、私の記憶能力の範囲を超えてしまう情報量を主とした取っ付きにくい
従来の歴史書に対し、本書は非常にシンプルであり要は読みやすい歴史書である。
最後に、20世紀をあらわす代表的な技術として「公衆衛生」「環境」「農業」を挙げている。
これからの世界を考える上で非常に意味深い。
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