トーキョーキッチン

NO,002

■ トーキョーキッチン

9月

著者:小林キユウ
出版:株式会社 リトル・モア

昔、「神田川」という歌があった。
その歌の内容をオヤジやオフクロが当時の年代と同年代となった子供に話すとまるで
明治維新前の出来事のような反応を子供がするのだそうだ。しかし神田川とよく似た
住宅環境で暮らす独身の若者はまだまだ東京にはいるらしい。
そんな若者を取材したのが本書である。

住環境はよく似ているとはいっても、アパートの広さだけであってその他家電製品や
衣服、食は満ち溢れ、非常に合理的な便利な生活になっている。本書は、その中で
「食」をテーマに一人暮らしのキッチンを取材している。
コンビニエンスストアのおかげで多くの若者は自炊の機会は減っている。が、それなり
のこだわりを持って生活している若者が多いのに驚かされる。「物が溢れ恵まれた今の
若者の生活」はという世間の風評とは裏腹に、いつの時代もそう変わらないのではない
かという気がしてくる。
誰でも20代の頃経験したであろう「まだ見えない将来の不安と輝くような夢」
そんな気持ちを思い出したいオヤジ達には一読の価値を持っている。

読み終わった時、こんなことが頭に浮かんだ。
昔は何か思い立ったら体は自然に空に浮くように動いていたものだけど、今はまず
「どっこいしょ」と声を掛けてから体を動かす自分は歳をとったのだろうか?
くすぐったいような眩しいようなそんなかつて経験した事を思い出させてくれる本である



前のお話へ 次のお話へ


空の写真 今月の本(2001)
面白かった本などを紹介します。
2001年に読んだ本の中からの紹介です。