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NO.012 |
■ 食をもって天となす
7月
著者:Jia Hui Xuan・石毛 直道
出版:株式会社 平凡社
古くからの伝統を正しく継承した文化を持つ国は、その料理法も豊富である。また、広い
地域からなる国土を持つ事によりその食材も多岐に渡る。その意味で中国は最たるもの
であろう。
そんな中国の過去から現在に至る料理の変貌を元日中友好協会のHui Xuanさんと農学
博士であり食文化研究家の権威である石毛氏が、対談という形でまとめたのがこの本である。
いわゆる中華料理の定番である酢豚や海老チリといった料理は、中国ではあまり一般的な
料理ではない。
家庭料理といった通常の食事では、その主役は、野菜で肉類は味付けまたはアクセントと
いった位置付けになるらしい。確かの中国の普通の食堂でも野菜料理が主役だった。
肉文化を日本にもたらしたアメリカでも、100年前までは、野菜料理が中心だった。
「大草原の小さな家」シリーズを読めば良く分かる。ちなみに、「大草原・・・」では、数少ない
肉料理としてリス料理が登場する。ローラがよだれをたらして喜ぶシーンがある。
日本以外の国では、昔から肉料理が主役だったという教育を受けてきた気がするが、実は
中国でも肉料理が主役では無く穀物・野菜・木の実といった食材を中心に料理が成り立って
いるのをこの本は述べている。
もともと中国では、女といわず男といわず料理を作るらしい。
また立って食事をする習慣があるらしい。一部の地域では米が主食だが、多くは小麦を使った
饅頭・包子・麺が中心となっている。それに野菜料理とスープといった組み合わせが一般的な
正しい中華料理といえる。また朝は外食というのが昔からの都市生活者の習慣となっているらしい。
そんな訳で最近では一人子政策による核家族化で調理時間のかからないファーストフードが
若者を中心に食事の主役になりつつある。が健康にとても気を使う中国人はファーストフードも
従来の伝統料理と同じ感覚で陰・陽、暑・冷と思想のもと取り入れている。
どこかの国の薄っぺらいグルメブームや点としてしか考えられない健康食ブームとは、根本的に
生きる上での食事に対する思想がまったく違う。
そんな事を覚醒させる本である。
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