NO,013

■ イブの7人の娘たち

4月

著者:ブライアン サイクス
訳者:大野 晶子
出版:株式会社 ソニー・マガジンズ

今日はどんな本を読もうかと考えた時、本屋で本のタイトルを見て判断する
事が最近多い。またこの法則に従って選択するとかなりの確率で「アタリ」
も多い。
過去の例で「アタリ」ベスト1は「クマにあったらどうするか」これは、
とってもタイトルが気に入りました。また、読んでみたらこれまた面白い。
ベスト2は「恐るべきさぬきうどん」これもよかったね。
ブームになりました。畑の端のトタン小屋に連日大行列が出来る珍現象が、
巡礼の地、四国香川県で巻き起こりました。
私のさぬきうどん熱も一気に上昇しまくりました。

で、今回の本、タイトルが面白いわりには極めて真面目な学術書である。
とはいっても、素人の方にわかり易いように書かれた本であり話題となった
本でもあるらしい。
最近本を出版した私の友人の税理士も、「相続で500万円得する方法」的
なるタイトルにしたらこの分野の専門書としては異例のベストセラーとなった
ようで本のタイトルというのは、大変重要である。

さて、本題。
オックスフォード大学で遺伝研究をしていた著者が、奇妙な依頼を受ける事
から物語は始まる。アルプスで氷の中から発見された5000年前の遭難者
「アイスマン」(そのものずばりの安直な名前!!)のDNA鑑定を行う事
となる。その鑑定結果がセンセーショナルな話題となる。それまで、著者は
考古学や人類学にはあまり興味も無く、ましてや日頃、地味な研究に明け暮
れた遺伝子研究がこんな分野で役に立ち、かつ話題となる事に驚く。

偶然から生まれる産物は、時として、重なり合った関連性の無い複数の偶然
から生まれる事が有る。
この場合のもうひとつの偶然、それは著者がバカンスで滞在した南太平洋の
島で、バイクに乗り椰子の木に突っ込み、結果入院した事から展開し始める。
これも私の友人の話であるが、サイパン到着直後バイクに乗り、自己の運転
技術の未熟さからバイクに引きずられ、全身切り傷数十箇所。
結局、ダイビングも出来ずにホテルで綺麗な空を眺めるだけで帰って来た方
がいたが、南の島のバイクは要注意!?である。
さて、病院で予定外の長逗留を余儀なくされた著者、暇つぶしに自分の専門
分野を発揮する。医者を口説き、島民のDNAサンプルを基に定説の考古学
を覆す大発見をする。

抑えておきたいポイントとして、
@ ミトコンドリアDNAは、母からのみ受け継がれるDNAである事
A これは安定したDNAで、突然変異周期から炭素法と同様の測定が可能
B これにより、種族の素となる母のクラスターとその年代がわかる
C 当然の事ながら、その母には母がいるが測定の限界を超える
D さらに当然の事ながら、始めに一人の人間しかいないでは無いという事

著者は、この本でこんなきっかけからヨーロッパ民族は7人の母から派生し
現代に至り、測定可能なその最も古い起源は、4万5000年前まで遡る。
と説いている。
また、著者は客観的に自己の置かれた立場、その時々の学術的な反論や論争
その際の自己の思いと行動を丹念に綴っている。人間どうしても欲や見得を
気にするものだが、極力抑えて自己を客観的に見ている。さすが紳士の国の
生まれである。
さらに、専門分野では無い領域の仕事に対して、自分だけの研究とするので
無く、多くの方の協力と参加を仰ぎ全体成果として仕事を進めていく。
そんなチームワークの大切さと個々人の専門能力を引き出すマネージメント
の重要さも本書からは伝わってくる。どこかの国の学閥の中で、研究成果も
発表せず、時間という実績と監修という手法で学説の方法を委ねるのとは、
訳が違う。
 
ところで、自分のミトコンドリアイヴを知りたい方は、以下のサイトで受付
けています。もっとも全部英語ですが・・・
http://www.oxfordancestors.com
英語が苦手な方は、以下のサイトで日本語の案内があります。
http://www.sonymagazines.jp/mmt/200111080710

最後に現在もこの研究は進行しており、最新の研究結果として今判定できる
種族の素は、35の母(クラスター)に分類されるらしい。










前のお話へ 次のお話へ


空の写真 今月の本(2004)
面白かった本などを紹介します。
2004年に読んだ本の中からの紹介です。