猟師町のうめぇモン!


NO,023

■ 漁師町のうめぇモン!

11月

著者:西潟 正人
出版:生活情報センター

小さな港町を午後訪れると、町中に響き渡る聞きなれない放送を耳にする事
がある。「おかず分けします」というアナウンス、初めて聞いた時、何だろう
と驚いた。港のセリ場に続々とバケツを持った人が集まってくる。
何だぁと覗くと沢山の魚、いわゆる雑魚である。市場を通してもなかなか値
が付かない魚達である。

都市に住んでいると見た事も聞いた事もない魚、その土地で沢山揚がるが、
市場では余り見向きもされない魚を地元の方は、昔からの料理法で食卓に乗
せている。そんな食材と料理を求めて、著者は全国北は北海道から南は沖縄
まで丹念に小さな漁師町を探訪して行く。
本来のスローフード運動とは、著者のような外部の人が、本人達が気が付か
ない大切な事を気付かせる事。または、それを通じて人が通い独特の食材と
料理を次の世代に維持していく事であると感じさせてしまう。

以前にも、その著書「漁師直伝」を紹介したが、著者は逗子で魚料理を出す
呑み屋のご主人。仕事の合間を見つけて全国を旅する事はなかなか大変かと
思われる。が、自らの仕事の領域を拡げる見聞でもあり、また宿や呑み屋で
の会話も互いに生業を共にする同士、同じ時を過ごしてもその中身の充実度
は大変深い。
自らの動機付けと著述業は専門としていない為か、その紹介の文章には無理
が無い。文章を読んで思わず今日は無性に酒が呑みたくなる。そんな気にさせて
くれるかどうかが良質な文章の判断基準としているが、この本は正に呑むぞとその
気にさせてくれる数少ない本でもある。














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2004年に読んだ本の中からの紹介です。