NO,016

■ なぜイタリアの村は美しく元気なのか

  11月

著者: 宗田 好史
出版: 株式会社学芸出版社

イタリアで今アグリツーリズモが盛んなのかを探った本。
イタリアも日本と同じように敗戦国であり、政権が混乱し、農地解放もあった。
しかし、今や立派な農業国となりアグリツーリズモで海外からの旅行者を受け
入れいる。

日本との違いはどこなのか?
著者は、7つの章でその成り立ちを著している。

第一章は、ひとりの行動から始まったアグリツーリズモ協会発足の話
第二章は、スローフード運動について
第三章は、スローシティー運動について
第四章は、農村の景観を世界遺産に登録させたオルチャ村の行動
第五章は、EU農業政策の転換
第六章は、ゆったりを求める大人の観光事業への転換
最後の章は、地方の自立と多様について
である。

日本との違いはどこなのか?
簡単にまとめると、
本来自分の住む地域を皆で美しく保ち、伝統を守る文化を持っている事、中途
半端な農業改革により、日本のように保護された農地売買では無く誰でもが、
自由に農地を売買する事が出来たため、農家を継ぎたくない次世代の子供たち
が、農地を手放し、結果的に農業をやりたい人の手に渡り、スムーズな農地の
流動化が行えた事。

日本のような高度成長期が無かったため、若者の失業率が高く、都市での就職
にありつけない若者が、村での生活を選ばざるを得なかった事。
日本で今、問題になっているTPPと同じような、EU統合による農業政策の
転換が、かつてのイタリアを襲い、その中で、収益を上げる農家しか生き残れ
なかった事。
以上の事を考えると、これからよりその環境が厳しくなる日本の農業を、ある
面、これからイタリアのように成功出来るチャンスが来ると著者は、予言して
いる。

ところで、本文中て大変印象に残ったくだりがある。
曰わく、日本のグリーンツーリズムは、旧守派が描く理想の農村に客を呼ぼう
としていて、イタリアのように従来の農村とは違う革新的な農業と訪れる都会
の人の目に叶う事が、必要であると。

日本の農政を担う人に聞かせてあげたい言葉である。




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面白かった本などを紹介します。
2013年に読んだ本の中からの紹介です。