職漁師伝

NO,001

■ 職漁師伝

  1月

著者:戸門 秀雄
出版:財団法人農山漁村文化協会

清流には、岩魚が群れを成して泳ぎ、ダムの無い川には、川魚を
捕って生業としている川漁師が全国にいた。
まるでお伽話のような世界が、この国にはつい最近まで存在して
いた。

そんな夢のような話を、当時漁師として体感した方々に話を聞き、
まとめたのがこの本である。
場所は、奥志賀、秋山郷、草津、嬬恋、奥多摩、尾瀬、銀山平、
浜平、乗鞍、奥飛騨、飯能、

著者は、考古学を志すも渓流魚の魅力に取り憑かれて、宮本常一
のフィールドワークを敬愛し、その取材姿勢を継承しようと活動
している。
その姿勢が、生々しい現場の緊張感や空気感を良く著している。

ここには今は無いせせらぎや瀬や、山人の簡易な小屋や、テン
カラという日本独自の疑似餌の記録がある。
残念ながら、今の日本には亡くしてしまった古からの人の営みや
文化が、ここには残っている。その意味で本書は大変貴重な記録
を残しているといえる。
かけがえの無いこんな大切な風景は残念ながら今この国には無い。





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