NO,003

■ 現代の民話

  1月

著者:松谷みよ子
出版:中央公論新社

日本の昔ながらの民話を収集した著者が、現代の民話を収集し、
まとめたのが本書である。

現代の民話を取材するにつき著者が求めたテーマは、税金・戦争・
幽霊でありそのユニークな発想には、内容の驚きと長年取材して
きた中で、人の関心は、どこにあるのかを熟知した著者ならでは
の発想だろう。

そんな現代の民話というジャンルを確立させたその発想が面白く、
思わず読み出した本である。

まず、昔話と現代の民話を繋ぐ、大きな転換期である明治の頃の
話から始まる。ここに登場するのは、狐や狸が様々なものに化け
出る話である。
その中で、もっとも目を引くのが、汽車に化ける事である。
汽車と張り合い、正面衝突した例もあり、ジブリの映画にも、
触てられている。

ところで、民話と伝説はどう違うのか?

同じ伝承でも、 民話はあったかもしれない事、伝説は実際に
あった事という点が違うんである。
この本を読んでいて思い出したのが、以前紹介した「イタリアの
魔力」である。

この本、イタリアの少し重くしっとりとしたエロチックでもあり、
凄惨でもある古からある伝承をまとめた本である。
本書も同様に、著者の集めた昔話や現代の民話からは、重みと、
深みのある味わいとユーモラスなエロチックさ有り、この部分で
同じ歴史の古い国、イタリアとは共通している。
まさに歴史の重みがある両国だからこそ、生まれる文化なのかも
知れない。

この文化は、これからの日本を売っていく他には無い貴重な財産
かも知れない。





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