東海道五十三次食ウォーキング    

NO,010

■ 東海道五十三次食ウォーキング

 12月

このところ、週末を利用して自転車に乗って日帰りで、旧東海道
を京都に向けて、上っている。もちろん日帰りなので、その都度
自転車を分解して、袋に詰めて電車に乗るいわゆる「輪行」と、
いうやつである。

日本橋を出発して4回目、箱根を越えて三島までやってきた。
ここから先は、日帰りでは電車の移動時間も馬鹿にならないで、
2泊3日程度の時間をとって京都まで進もうと考えている。
三島までは今まで、自動車や電車でちょくちょく来た事があるが、
ここから先は来たとしても、新幹線での名古屋までノンストップ
なので、東海道の街道筋は殆ど知らない。

宿をどこにしようか?
どこで何を食べようか?

そんな事を考えながら、東海道の本を咲かしていて見つけたのが     
これ。
この手の本って、観光名所をその名所が出しているパンフレット
やホームページからそのままコピペしたようなものや、やたら、
宿と宿の距離や人口などの数字の羅列だったりが多くで、読んで
いてもあまりわくわくして来ない。
が、本書は実際に歩いた人の息遣いが読んでいると伝わってくる。
これから、東海道を京都に向かって行こう!と決めた気持ちを、
後押ししてくれるかのような息遣いが伝わってくる。

また本書は、どんな宿に泊まったいいか、何を食べたらいいか、
について、とても参考になる書である。
著者の本業は、管理栄養士である。
その立場から、宿の料理は、一般的な旅館のハレの料理では無く、
日常の毎日食べても飽きない、それもその土地に根付いた地域の
普通の食を出す宿を探して泊まる旅を続ける。
その宿が、かつては商人宿と呼ばれ、今は、工事で出張してきた
職人達が泊まるビジネス旅館といわれる一泊二食付きの宿となる。
宿泊料金も5,000円〜7,000円とリーズナブルで、毎日、食べても
飽きない食事である。
たしかに、温泉旅館の豪華な料理を何日何日も食べ続けていたら、
嫌になるよね。

ちなみに、著者のお薦めの宿と食事処は、
・立会川の蕎麦屋 吉田屋
・保土ヶ谷の蕎麦屋 桑名屋
・茅ヶ崎の居酒屋 みや川
・吉原の老舗宿 鯛屋旅館
・丸子のとろろ汁 一松屋
・藤枝の弁当 喜久屋
・小夜の中山の飴 扇屋
・袋井の老舗宿 旅館たたみや
・二川の食堂 つかさや
・豊橋のビジネス旅館 大黒屋旅館
・御油の喫茶店 どんぐり茶屋
・御油の老舗宿 大橋屋
・岡崎の味噌屋 カクキュー
・関の蕎麦屋 会津屋
・草津の餅屋 うばがもちや
・瀬田の公共宿 滋賀県青年会館

ところで・・・

地元の普通の食をと考えた著者が、選んだ宿は、工事をする人が
泊まるビジネス宿、所謂、昔から在る商人宿である。しかし商人
やビジネスといっても、ホワイトカラーのビジネスマンが泊まる
ビジネスホテルとは違い、一週間やそれ以上長い期間滞在する人
が泊まる宿である。そんな宿では、宿泊代をより安くする為と、
毎日旅館のような豪華な料理をたぺ続けたら、栄養面の問題と、
飽きてしまう事を避ける為に、家庭で食べるような普通の料理が
出される事が多い。
ならば、その地域別に普通の料理の違いは何があるのか?
それを知る為にはビジネス旅館に泊まり、その宿の料理を食べ、
その内容を著している。

そんな著者の文章の中で、その地域別の食の違いが最も顕著にと
現れているのが味噌だという。浜松を過ぎた辺りから、米味噌が
豆味噌に変わり、そして、滋賀県に入ると、また米味噌に変わる
そうである。

最後に著者がまとめで書かれている事で、興味深い事があった。
それは、何故、日本人は旅行の第一義に料理が来るのかという事
である。旅行のパンフレットには、「伊勢海老一匹付き」とか
「ステーキ135グラム」とか謳い文句が多い。世界遺産よりも
伊勢海老、歴史的建造物よりもステーキである。
何故、そうなったのかについて、著者は、詰込み型の修学旅行を
経験し、道中を、目と耳と鼻と手触りで感じる事をしないそんな
旅行ばかりでは、五感に感じられる事が食べるだけとなり、専ら、
ハレの豪華な食事しか、旅行では感じられ無くなってしまった事
に起因するという。

なかなか奥が深い説である。






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面白かった本などを紹介します。
2015年に読んだ本の中からの紹介です。