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■ アンドロイドは、電気羊の夢を見るか?

  1月

著者:フィリップ K ディック
訳者:朝倉 久志
出版:株式会社 早川書房

映画ブレードランナーの原作として、あまりにも有名な小説。           
意外と読んだ事が、無い人が多いのではと思われるSF小説である。
かくゆうUKIも、この歳にして初めて読んでみました。

粗筋を書くと面白さが半減するので書かないが、映画とは筋書き
が違うものの、偽りの記憶と真実とのギャップに人は、どのよう
な反応をするのか?他者や生き物に対する愛情や死に対する感情
や、痛みの感情が麻痺していく現代社会を、アンドロイドと人間
との対峙という設定の中で訴えていくその主題は、共通している。

主人公の心理状態の変化と、何故そうなるのかを、ストーリーの
流れの中で著していく手法は、読む人に何故そうなるのか
を考えさせる、最も分かりやすい方法とも言える。
この心理学を応用した手法を著者は、感情移入という言葉で現わ
している。

さて、本文の筋書きとは関係無いが、主人公がステータスとして
憧れるペットを飼う為、動物を通販する会社のカタログに載って
いる、絶滅危惧種にある動物の表示が、イタリック体で書かれて
いるとの表現がある。
UKIは詳しくは知らないが、博物学の図鑑ではそのように書く
らしい。そんな事を読む前に知っていれば、思わずくすっとなる。
そんな、小ネタが、随所にあるらしい。

また、これもどうでも良い事だが、主人公に絡む登場人物の中で、
重要な役割を担う男性の名前が、フィル・レッシュという。
フィル・レッシュといえば、アメリカ人で、知らない人はいない
名前である。
アメリカでかつて最も有名なロックバンド、グレートフルデッド
のベーシストの名前が、フィル・レッシュという。
著者が、重要な登場人物にこんな有名な名前を付けたのは、何ら
かの意図があったのだろうが、知る人ぞ、知るといった、そんな
レトリックがちりばめられていそうである。

最後に、エンディングはどうなるんだろうと読んでいる途中から
気になって気になって仕方がなかったのだか、こういう終わり方
があるんだという意外な終わり方である。

一読をお薦めする傑作である。





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