NO,002

■ 徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか

  3月

著者 康 照奉
出版 株式会社 実用之日本社

近くて遠い国、韓国。
戦後一貫して外交が躓いている間柄である。しかし、かつて朝鮮
出兵から100年も立たない間に、関係を改善し、それから明治
の日韓併合までの約350年間、お互い良好な関係を築けた時代
があった。
状況的には、当時と今は余り変わってはいないのに、なぜ、当時
と同じような形になれないのか、在日韓国人である著者が、両国
の歴史と各々の事情を分析しながら著したのが本書である。

朝鮮出兵のおかげで、険悪な風潮となった日韓関係から、打って
変わって通信使という形での良好な関係が保たれたのは、著者は、
朝鮮側の理由として、
朝鮮出兵の張本人、豊臣秀吉が死に豊臣政権を潰した徳川に朝鮮
側が親近感を持った事、朝鮮出兵で拉致された朝鮮人を戻すため
日本と交渉して、朝鮮側の要望が組み入れられた事、海賊紛いに
暴れる和冠を追い払うために、日本の協力が必要だった事を挙げ
ている。
それに対し、日本側の理由として、
徳川政権が出来たばかりで、その政権に、正統性がある事を示す
ため、朝鮮と国交を結んで、将軍が代わる度に通信使を江戸まで
来させ、道中、多くの人の目に触れさせて徹底をさせた事、また、
幕府の推奨する学門として朱子学を学ぶ為、その先輩である朝鮮
の知識が必要だった事を挙げている。

また外交をスムースに勧める為に、互いの文化や、民族の気性の
違いによる、様々なトラブルで衝突しながらも互いに調整をする
努力を惜しまなかったのもその要因といえる。
その背景として、当時の両国の文化人が、共通の教養としていた
中国の漢詩を理解し、その上で、互いを尊敬していた事にある。

現代とは事情は違うとはいえ、何時でも人と人との交渉から外交
は始まる。様々な事情はあれ、お互いの人格と相手を、敬う心を
持って主張すべき事は主張し、交渉すべき事は交渉する必要が、
いつの時代にも求められるのではないのだろうか。

なぜ、隣国との良好な関係が300年以上も続ける事が、当時は
出来て、今、出来ないのかは、ここら辺りにあるのでは無いのか
と思われる。






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