戦国合戦通説を覆す    

NO,002

■ 戦国合戦 通説を覆す

  6月

著者 工藤 建策
出版 株式会社 草思社

本書は、世間一般で云われている「通説」とは違う角度から、
歴史を検証した読み物である。

その「通説」の矛盾を丹念に検証して、たぶんこうだったので、
はなかろうかと、事実を探っている。
本書が「検証」と実際がいかに違うかを検証している合戦は、
・川中島の戦い
・桶狭間の戦い
・長篠の戦い
・三方ヶ原の戦い
・高松城水攻め
・賤ヶ岳の戦い
・関ヶ原の戦い
・大阪の陣
となる。

合戦に勝ち残ったのは、周到な準備と、負けない為に、リスクを
いかに少なくするかが大切な事となるが、時の運も大切である。
勝ち残った勝者による自己賛美は、勝つ必然性があったと謳い、
それが「通説」となるが、実際、勝ち負けが微妙な危ういところ
にあったりする。
また勝利した裏側には、後生に残ると都合が悪い事実もある。
卑怯な手で勝利したり、その能力が無いにもかかわらずに、勝利
出来た事など、知られては困る事もあるのであろう。

また、本書を読むと、日本の勝者の歴史の記録でもある「通説」
は、誰かを英雄を立て、さも勝利したのが必然で正しかったのと
結論付けているものがいかに多いかという事を感じる。
何故、そうなるのか?
それは、自己の属する組織を維持継続させて行く為には、自己を
正当化させる事に他ならない。その為には、自己の属する組織の
シンボル、または象徴として、武田信玄や織田信長や豊臣秀吉や
徳川家康といったリーダーがいかに正しかったを説いている。
英雄を自己の組織のシステムとして組み入れていくのが、日本の
「通説」になるらしい。

ところで・・・
本書を読んでみて、本題とは全然関係無いところで、感じ入って
しまった事がある。それは、人は時として否応無く勝負に掛ける
時があるという事である。
そして、どれ程周到な準備をしていても、時の運で勝負に負けて
しまう時もあるという事である。さらには、勝つか負けるか分か
らないその瞬間、人は勝とうが負けようが、いずれにしても生き
ている事を強烈に実感するのであろうという事である。






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