NO,012

■ 仕事熱心


いつか、三浦の中程カツオ釣りで有名な港から仕立てで釣りに出た事があった。

船長は、港を出るなり西を目指す。尋常では無いスピードである。この日はなかなか
ナブラが見つからない。
走る事約半刻、ナブラが見えてきた。ここで餌の生きた鰯を蒔く。
蒔いていたらいきなり船長素っ飛んできた。
船長:「おまえら、何やってんだよ!!餌はこうやって蒔くんだよ」
タモ網をいきなりひったくり盛んに蒔く船長、と気が着いてこちらを見て、
船長:「釣りに来たんだろう。早く竿出せよ」
こちら:「あの仕掛あります?」
船長:「仕掛持ってきてないかよ。お前ら何しに来たんだよ!」
おいおい、幹事聞いてないぞ。仕掛あるっていってたじゃん?
呆れた船長、これでも使えよと錆びた針を渡す。一応これで釣りになる。

急拵えで作った仕掛けに餌の鰯を付けて竿を出す。ここで掛かってきたのが鰯に目を
奪われた海鵜。魚釣りで鳥釣ってどうすんだよ!!
仕掛けに絡まった海鵜、暴れてなかなか外せない。海鵜のくちばしは尖っているので突つ
かれるわ、噛まれるわ大変である。ここで船長登場である。
船長:「何もたもたやってるんだよ!!かわいそうだろよ」
船長いきなり海鵜を引っ叩き、足で押さえつけて仕掛けを外す。
何かそっちの方がかわいそうなような気がするが、それでも海鵜は仕掛けを解いてもらって
海に帰る。


釣り再開である。がナブラはもう無い。また走る。
この日はナブラがなかなか見つからないようである。船は走る走る。
結局その日は相模湾二往復である。走りながら船長がぼやくぼやく。
船長:「何だよ、今日は素人かよ。やってらんないよ」
私ら漁師が本職では無いのだが、この船はどうやら本職の人が乗る船のようである。
再び幹事話が違うんじゃない!?


何はともあれ、その日は各人シイラまたはカツオが釣れたので海に魚はいたのでしょう。
仕事熱心な船長、何とか釣らせようとその日一日相模湾を二往復走らせていました。
竿出した時間正味1時間あったかどうかである。
船を上がった後、今回の参加者大手企業経営者「キーさん」が発した言葉が印象的だった。
曰く「金出して怒られたの何年振りだろう。新鮮だよ。」








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 心に沁みるお言葉
古来より、日本には言霊(コトダマ・コダマ)信仰というのがあります。
発した言葉自体が生命を持って何かを為すという考えです。
UKIの心に沁みたありがたいお言葉をお伝えします。