NO,008

■ 生きててよかった

私の知合いの独身の方のお話である。
トイレに腰掛けていたら、リビングで電話がなった。ズボンを上げるのが面倒なのでおろした
まま飛び跳ねてリビングに向かった。廊下とリビングを間仕切るドアのところに来たところで、
記憶がなくなった。


気が付いたら倒れていた。電話はもう切れていた。
飛び跳ねた際、ドアの上の鴨居に頭をぶつけてその場で気を失っていたようだった。
起き上がろうとした瞬間、彼は愕然とした。パンツとズボンが廊下に転がり、下半身には何も
つけていない。朦朧とした記憶の中で今までの自分の行動がぼんやりと思い出された。
もし、このまま気を失ったままで死んでしまっていたら・・・
自分の葬式の時の友人や親戚の顔とその会話が浮かんできた。
ああ〜生きててよかった

NO.009

■ 足が10本の鯛?

UKIは会社員である。一応肩書きがあって言う事を聞かないが部下もいる。その部下の
一人から釣りに行きましょうと誘いがあった。段取りを確認するので、彼の指定した時間に自宅に
電話を掛けたのである。


電話口に奥さんが出た。ちなみに彼女と彼は社内恋愛で結ばれた仲である。
「うちのダンナ今風呂に入っているんですよ。仕事の電話ですか?」
別にたいした話じゃないので、後で電話が欲しいのでと言って切ろうとしたら
「釣りでしょう?UKIさん。うちはまだ子供が生まれて間も無いのご存知でしょう?」
そう、最近かわいらしい女のお子さんが生まれたのである。
「普通、子供が生まれたら遊びの誘いは遠慮するんじゃないですか?」
ありゃ〜、何か変な感じになってきたぞ。
「ダンナがお風呂に入れたり色々大変なのですよ。普段仕事が忙しいっていっている人に釣り
なんて誘わないでしょう。ただでさえ、家の事やらないんだから・・・・・・・・」
電話切ってくれない。知らず知らずのうちに正座して受話器を握りながら、お辞儀をしている自分
に気が付いた。延々10分間有り難いお言葉を頂いて、今回は仕方無いが今後は充分注意する
ようにと約束をさせられようやく電話が切れた。お説教されてしまった。


そういれば、彼女在職中は経理の仕事をしていたが、よく出金伝票の束をデスクに叩きながら
経理部長に
「これは何?どうなってんの」とよく詰問していたっけ。
その後電話を掛けてきたダンナに「風呂なんか入っているな!」と文句を言ったのは言うまでも無い。


で、肝心の釣りであるが鯛狙いで行ったものの本命は調子が今いちで急遽烏賊釣りに変更し、
互いに20杯以上は釣れたのである。これは上出来であろう。
意気揚々と帰った彼、得意になって玄関口でクーラーボックスの蓋を開けた。
その時の彼女が発した言葉。
「何かい?最近の鯛は足が10本あるのかい」




前のお話へ 次のお話へ


 心に沁みるお言葉
古来より、日本には言霊(コトダマ・コダマ)信仰というのがあります。
発した言葉自体が生命を持って何かを為すという考えです。
UKIの心に沁みたありがたいお言葉をお伝えします。