|
NO,001 |
■ チヌ釣師はどこでも勝負する
■ 人間、ある程度年を取るとなかなか勝負するという機会は無い。
まわりを気にするせいか、はたまた色々と計算して無難に過ごそうと思うのか、日常
ではあまり勝負している光景は見当たらない。
でも、潜在意識の中ではどうなんでしょう?
心の中では、常日頃勝負したい、エキサイティングしたいと思っているのではない
のかなぁと感じる事がある。
■ 例えば、競馬や宝くじ、パチンコやスロットなど大盛況である。
この勝負は、あまり危険が伴わないが時として前後を省みずに勝負している人もいる。
遅い時間の駅で互いに酔っ払った人達が時々勝負している光景を見る事がある。
この時は互いに酔ったいきおいでという事もあるが、時として早朝の満員電車でも
勝負している人がいる。お酒も入っていないのに、あの元気はどこから出てくるの
だろうと感心する事もある。
■ ある日ある時、「福浦チヌ同好会」のひささんと美味しい魚とお酒を共にした事が
ある。不思議と今までひささんとは一緒に竿出して釣りをした事がないのである。
ひささんの素晴らしい美声のカラオケを堪能し、お酒を飲み、クリーンアップで一緒に
ゴミを拾い、バーベキューをしてまたお酒を飲む事はあっても一緒に釣りをした事を
した事が無い。
■ そんな訳で互いに釣りの腕を目の当たりにしていない二人、今回はUKIの知って
いる面白い呑み屋に行く事と相成った。
ここは、ちょっと良い値段のする魚料理の料理屋に隣接する立ち飲み屋である。
同じ経営との事だが、本店の料理屋よりも魚のネタが良いのではと思うような旬の
刺身が置いてある。もちろん立ち飲みだから本店よりも、数段安い。
また良い日本酒も置いてある。
■ 釣りをして、自分で魚を捌く人はある程度魚の良し悪しがわかる。また、美味しい
魚を食べたがる。で、ひささんをご案内した次第なのだが、実はもうひとつご案内した
のには理由がある。
この呑み屋の大将、大変若いのだが魚には詳しい。自らも釣師なんである。
それもバリバリのチヌ釣師!これはひささんをお連れするしかない。
■ 釣り師、特にチヌ釣り師は、互いにチヌ釣り師だとわかるらしい。
呑みはじめてすぐにひささん、わかったらしい。ここでUKIはすかさず互いを紹介する。
大将
「入ってきた時からわかりましたよ。最近どうですか。こないだ52センチ」
と言いながら壁に貼った自分が釣った黒鯛52センチの写真を外す。
ほう、なかなか凄いね。45センチ超えなんてなかなか釣れないんじゃない。
ところが、ひささん
「ちょうど私もこの間52センチ釣ったんですよ。これ・・」
ポケットからすかさず写真を出して見せる。
おいおい、この人達なんなんだろうね。店入ってまだ1分にもなっていない。
早くも勝負である。最もこれを期待してひささんをお連れしたんであるが。
■ 大将ちょっとたじろぎながら
「船でしょう?船だったら誰でも釣れるしね」
ちなみに大将は磯釣り師である。ひささんもテトラの磯釣り師である。
ひささん
「磯ですよ。福浦」
大将
「湾内かぁ、臭くて喰えないね」
何か挑発的な大将のペースになりつつあるので、ここでUKIが助太刀する。
UKI
「釣ってすぐ締めたら美味しいよ」
大将
「外海に比べたらね。話にならないよ。でも磯釣り師なら認めるね。船釣りは、
あれは自分で釣ってんじゃ〜ないからね。船長に釣らせてもらってるんだから。」
これはUKIも同感である。
大将
「船釣り師なんてね。所詮釣らせてもらってんだから。後ろにいるお客さん、船釣り
師なんだよね。おとなしいでしょ?この店来ると船釣りバカにされるのわかっている
からいつも大人しいんだよ」
なんかこの店凄いなぁ。UKIも何回か通い口が悪いの知ってはいたが、ここまで
はっきり言うのは初めてである。
■ ひささんに口が悪くてごめんね。とあやまるとひささん曰く、チヌ釣師はこんな
もんなんだそうである。確かに「福浦チヌ同好会」の面々、日頃互いに毒舌を撒き
散らしている。
チヌ釣師はどこでも勝負する。
|
|