NO,011

■ ほんとうのたべものを求めて

4月

著者:赤池 学
出版:日経BP社

久し振りに中身の濃い本を見つけた。
UKIが日頃感じている事、またはこの「無量庵」サイトを立ち上げようと思ったきっかけと
なった事がこの本には殆ど全てが整理されて書かれている。
著者は、ユニバーサルデザインに基づく製品開発や地域開発を手掛けながら、執筆や
評論を行う科学技術ジャーナリストでかつ大学教授や省庁委員などを行う八方六臂な
活躍をしている方である。

資本主義の最も洗練された「マス生産主義」の弊害や、画一的な世界秩序に対抗した
文化の異なる自然に帰ろうとする「階級内秩序主義」とも言える運動の中での日本の
位置を確認した上で、今後の日本の方向性を、環境ビジネスを食と循環型エネルギー
社会のあり方として考える貴重なテキストである。
今ブームとなりつつある「スローフード運動」を学ぶところが多いと認めつつも社会性・
政治性の違いからある距離を置く事の大切さと、「江戸ブーム」に傾倒しつつもそれを
取り入れた上での新たな社会モデルの創造を指摘している点は大変注目に値する。

紹介されている事例は36ケース
・生産地虚偽と食品安全基本法について
・ブームとなるスローフード運動の限界性について
・バイオマス・ニッポン戦略構想について
・失敗における人的要因等に関する調査報告について
・伊那谷のニッポンミツバチ古式養蜂について
・東京農大の昆虫資源の機能開発について
・三重堆肥・育土研究所の育土ビジネスについて
・岩泉まつたけ研究所のまつたけ栽培と里山保全について
・室戸赤穂化成の海洋深層水について
・沖縄のモズクと岡山のアマモつくりについて
・荏原製作所の資源循環ゼロミッション構想について
・名城大学の耐塩作物つくりについて
・理化学研究所の低分子化合物植物ホルモン利用について
・東京農工大のGPS利用精密土壌管理システムついて
・ゼネコンのバイオメディエーションによる汚染土壌処理について
・産業技術総合開発機構のアグリエネルギーについて
・三重の循環型生産・廃棄連携について
・新潟の黒酢農法について
・新潟朝日酒造と農家の酒米五百万石現地生産・酒造について
・富山サカタニ農産の農業法人と一村一農業法人構想について
・福岡もったいない総研の地産地消エコレストランについて
・三重大学の地域ぐるみ生ゴミ堆肥資源循環について
・インターネットによる生産情報公開システム三重イーコードエスについて
・北海道木の城たいせつの間伐材利用の住宅建設について
・北海道漁協の魚付き林植樹運動について
・下川町農林組合の新炭素材開発について
・富山かんでんエルフォームのダム湖流木チップ化ビジネスについて
・北海道シラカバプロジェクトのエコロジー接着剤について
・熊本の地元材を使った無接着工法による住宅造りについて
・NPOエコリビング推進認証協議会による安な全建材の認証について
・世界水会議とバーチャルウォーター・ブルーレボリューションについて
・黒姫アファンの森エコ・メディカル&ヒーリング&エディケーションビレッジ構想について
・POEMAプロジェクトによるアマゾンバイオマス利用開発について
・小笠原第六次産業について
・中間山間村の活性化対策とクラインガルデンについて
・緑溢れる歩道グリーンウエイズについて
・愛知の森の中での環境教育について
・和歌山愛農会の生産者・消費者提携ネットワークについて
・援農NPO学生耕作隊について
・日本の昆虫産業とディフェクトスタンダードについて


本書で取り上げている36ケースは、見方を変えると日本発信の世界的なビジネス
モデルi-MODEに十分匹敵する画期的な新ビジネスになりうる可能性を秘めている。











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空の写真 今月の本(2003)
面白かった本などを紹介します。
2003年に読んだ本の中からの紹介です。