NO,013

■ 平成の竹竿職人

5月

著者:葛島 一美
出版:株式会社 つり人社

「道楽」という言葉がある。自分でその言葉を発する時何か後ろめたいような自分を卑下するような
そんな感覚が伴う。また人様から言われると思わず頭を掻きながらもちょっと嬉しい気持ちになる。
究極の「道楽」は石集め。その次は茶道具。その次に来るのが和竿ではないかとUKIは感じている。
幸か不幸かまだ何れもUKIはその道に足を踏み入れてはいないが、何時かは人様から言われてみたい
そんな言葉である。

本書は、歴史の中で生き残り洗練された江戸和竿を継承する東作をルーツとした40名の職人の話で
ある。江戸末期、武士から竿職人に転身した初代東作の技を師弟関係で現在まで累々と繋がっている。
元々東京湾の小物釣りから出発した江戸和竿は、芸術品とも言えるタナゴ竿や鯊・カワハギ竿など、
一度使ったら止められない魔味が竿を持つ釣人にじわりと伝わってくるのであろう。
いわゆる「病みつき」というやつである。
竹細工から始まり、漆や螺鈿細工など洗練された技が和竿には凝縮されている。
著者は、全国を旅してつりの伝承技を書き留めているつりライターでもあり、現在東京釣具博物館理事
でもあり本書では、撮影も担当している。丹念に取材されたその文章もさることながら和竿の魅力を、
余す事なく伝えるその写真の腕は相当のものである。

道楽の一歩手前をうろうろしている人にとって手元に置いて時々眺めるには最適の本である。












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空の写真 今月の本(2003)
面白かった本などを紹介します。
2003年に読んだ本の中からの紹介です。