魚は香りだ


NO,002

■ 魚は香りだ 

1月

著者:関谷 文吉
出版:中央公論新社

常々思っていた事がある。
美味しい食べ物って何なんだろう? 味?喉越し?見た目?
ある時、ある本にこんなくだりがあった。
「野に置いた木が炊かれその上に置かれたホットパンの上でジリジリと炙られたベーコンの
脂がはぜた時、醸し出されたその香りが彼の忘れ去られた少年時代の光景を瞬時に全て
完全に蘇らせていた。」
食べ物の香りは忘れ去られた記憶を再現してくれる。
記憶とは曖昧だがしかし、人は無意識の内に記憶を限りなく引きずるものであると・・・

UKIにもそんな記憶がある。山でもぎたての金柑を齧った時、空が大きく広がっていくような
錯覚を感じた時の事がある。
(最もそれ以来そのような感覚を覚える金柑に巡り合った事は無いけれど)

今回紹介する本は、そんな香りを主軸に魚を語った本である。
著者は、浅草で暖簾を繋ぐ4代目の鮨屋のご主人。その造詣の深さと魚の芯の美味さを知っ
た方ならではの世界を紹介してくれる。曰く「魚は香りである」と。

様々魚や貝、特に白子・真子といった内臓に関していかに香りが重要な位置を占めるかに
ついて詳細に語ってくれる。別にウンチクを垂れる必要はないが、胸の中に教養として修めて
おきたい
事がかなりの濃度で収まっている本である。






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空の写真 今月の本(2003)
面白かった本などを紹介します。
2003年に読んだ本の中からの紹介です。