NO,026

■ 珍説・奇説の邪馬台国

10月

著者:岩田 一平
出版:株式会社 講談社

いわゆる手前味噌、お国自慢、何故か高校野球では出身地高校を応援してしまう。
そんな地元贔屓・郷土愛が「邪馬台国」は何処はどこか?についても言える。
わが町・おらが村の「邪馬台国」である。少年時代に邪馬台国に魅せられた著者
は、自論を振りかざす事無く、わが町・おらが村の耶馬台国探訪に向かう。
珍説・奇説百科騒乱、たかだか原稿用紙5枚程度の漢文をどう解釈すれば、この
ように多彩な推察が出来るのか日本の創造力もたいしたものである。
著者は、各々自説を説く人を訪ね歩きそれぞれの言い分を検証して行く。
本著は、ある面ではルポルタージュでもあり、旅のガイドブックでもある。

さて著者は嬉々(多分)として訪ね歩き、様々な説を唱える研究者に取材を行う。
いわば「邪馬台国甲子園」の旅である。
各説もっともと思われる示唆に富んだ自論に一々頷き、その場所を見て唸る。
ひょっとしたらこの人、どこが邪馬台国だろうがそんな事は、どうでも良いので
は無いのかと感じてしまう程である。
紹介された場所は、ジャワ・新潟・大和・山陰・岡山・四国・別府・筑後山門・
鹿児島・福岡甘木の10箇所。すごいね。

各々主張する根拠の中で、場所を特定する道のりの解釈がどこかを基点にして、
枝別れだと主張するもの、グルグルと一周するもの、また方位が間違っていると
主張するもの様々である。その中で当時の中国の発音に即した地名を当てはめな
がらその道のりを辿る一説が有り、これは注目すべきであろう。
しかし、そもそも原典となる「魏志倭人伝」が風評を基にまとめられている事を
考えると、原典自体が単なる噂という新たな解釈の一説?も生まれたりする。
まぁ、しかし、これを言ったらお終いであろう。








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空の写真 今月の本(2003)
面白かった本などを紹介します。
2003年に読んだ本の中からの紹介です。