クマにあったらどうするか


NO,007

■ クマにあったらどうするか

3月

語り手:姉崎 等
聞書き:片山 龍峯
出版:株式会社 木楽舎

本のタイトルが気に入った。普段そんな事考えた事ないもんね。

語り手は、北海道に生まれアイヌの血を引く最後のクマ撃ち名人である。ドキュメンタリー
番組を制作するかたわらアイヌを研究している聞書きの著者との出会いからこの本は生ま
れた。クマ撃ちになった経緯やクマの行動や習性、冬山での過ごし方など忘れ去られてし
まう知恵が盛りめられている。1990年から春グマが狩猟禁止となりその知恵を継承する
人がいなくなった。また語り手もこれををきっかけに猟を止めたからである。

クマは本来おとなしい習性であり、元々クマのテリトリーであった山にクマの餌となる椎や
楢から成長が早く木材としての商品価値のある針葉樹を植林する事で生息数が減り食物
に飢えている事、また林道が整備され容易く山深くまで自動車で行ける事で山菜採りの人
が多く山奥まで入り込む事で、クマと遭遇する機会が増えた事、山奥でジンギスカンや弁当
・ジュースの空き缶の後始末を怠る事でクマがその味を覚えて里近くまでやってくる事など、
ルールを守らない人間のおかげで不幸な事故が発生している。
また、手負いのクマは最後まで向かって来るが突然の遭遇では人間以上にクマのほうが
驚いているので、もし遭遇したら相手から視線を逸らさない事でクマが逃げるのを待つ事が
大切と説いている。

それでも、クマが向かってきたらどうするか?
まず、逃げてはいけない。なぜならクマのほうが足は早いから・・クマは時速60キロで走れる。
距離が離れていたら立ち上がって腹から声を出す。相手が子連れでなければ助かる確率は
高い。子連れの母クマは大変気が荒いのだそうである。母は強し女性は恐いのである。
それでも襲われたら?
両手で頚動脈をかばうように首を抱えて座り込む。小突かれるかもしれないが、死には至ら
ない。また、クマが落ち着きを取り戻して人間が危害を加えない事が分かるとその場から足り
去る可能性もある。
それでも襲われたら?
まずクマは相手に馬乗りになるそうである。その時口を大きく開けて威嚇する。何か持って
いれば、口に突っ込む。また舌を掴んで引っ張るとクマは驚く。もしその鋭い歯で腕を噛んで
も腕をもぎ取る程の力はクマには無いそうである。命の方が大事である。
相手の方が力はあるが、相手も自分以上に驚いている。冷静になれるかどうかである。

遭遇しないようにベルや缶を叩くのが良いとされているが、最近のクマはその音に慣れていて人間が
来たとは思わないらしい。今のところ最も有効なのが空のペットボトルをペコペコ鳴らす事だそうで
ある。私もあの音は他人がしつこくやっていたら嫌である。

最後に語り手はこれから間違いなく人間とクマが遭遇する機会は増えてくると断言している。
山に入る人はこれから交通事故にあったらどうするか?地震が来たらどうするか?崖から落ちたらどう
するか?と同じように心得としてクマにあったらどうするか?を肝に銘じなければならない。










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空の写真 今月の本(2003)
面白かった本などを紹介します。
2003年に読んだ本の中からの紹介です。