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NO,016 |
■ マティーニを探偵する。
6月
著者:朽木 ゆり子
出版:株式会社 集英社
マティーニは、最も多くの話題を提供する頂点にあるカクテルと言える。
その作り方、レシピのバランス、はたまたその名前の由来など話し始めたら、
夜を徹し、朝を迎え、日が暮れるまで議論しても尽きない程話題を提供してくれる。
そんな奥深いマティーニだからこそ自分にとって最高のマティーニを出してくれる
バーを知っている事は、大人にとって、身に付けておくべき常識とも言える。
そんなマティーニの話題を一冊にまとめたのがこの本である。
作り方、レシピについては世の中でよく議論されているものを整理したに過ぎない
が、と言ってもその種類はオリーブを漬けた食塩水を入れたダーティやジンとベル
モットまたはワインの比率2:1砂糖も入った初期のスイートマティーニや15:1の
エクストラドライのモンゴメリーなど、その由来を知ると5〜6分のスピーチとしても
こなせそうである。
またオリーブかオニオンか?爪楊枝は何のためにあるのか?
すぐにオリーブを取り出すためか、飲みながら齧るためか、飲み終わるまで一切、
口に触れないように押さえているためか?
レモンピールは、断じてマティーニには似つかしくないと頑なに主張する会があった
りと笑わせてくれる。
ところで、本書で最も伝えたい事は何であるのか?
それは、マティーニの名前の由来である。
ズバリ、著者はその由来をマーティネスという名の町にあるとしている。
場所は、サンフランシスコから北東へ約60キロ、バークレー市の近くの町マティーニ
が生まれたのが1849年としている。
ここに至るまでの著者の行動でとても興味深い事がある。
それはバーテンダーの為のバーテンダーによるカクテルブックの存在である。
電話もTVもインターネットも無い時代、常に新しい情報と話題を提供する
場としてバーがあった。情報発信者であるバーテンダーは様々な情報・話題と、
カクテルレシピを知っていなくてはならなかった。
そのカクテルレシピ集として、カクテルブックが存在した。
その名も、バーテンダーマニュアル現存する最古のものは1862年、明治維新前で
ある。
それを図書館の古文書ファイルを丹念にあたり、検証している。
150年前の古文書のオリジナルを一般の人が手に取って閲覧出来る。
最近、評判のあまり良くないアメリカの隠れた良いところ、自由の国、開かれた国の
印象を強く受ける一面でもある。
ちなみに、カクテル自体の名前の由来はそれまでショットで売っていたバー
で酒瓶を始末する為、中途半端に残った酒を混ぜてお客に出したのが始まりらしい。
多分現在に至るまで、その命名には、さぞ多くのエピソードが盛り込まれた迷カクテル
がこの世に生まれ、また消えて行った事でしょう。
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