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NO,017 |
■ 高橋竹山に聴く
7月
著者:佐藤 貞樹
出版:株式会社 集英社
生前、そのライブを聴きたいと思っていてとうとう聴きそびれた人が二人いる。
津軽三味線の「高橋竹山」と、アメリカンロックの巨星グレートフルデッドの
「ジェリーガルシア」である。
本書は、津軽三味線を世に送り出した高橋竹山を綴った本である。
生前から一緒に主に「労音」で竹山と共にした著者が竹山死後、生前語った、
竹山の話を再構築し一冊の本にまとめたものである。
本書の中で、興味深い話がある。
竹山の豊かな音楽の素地として、門付けの修行時代での苦労が言われているが
竹山自身がその環境では、今の自分の音楽は生まれなかったと言う。
過酷な門付けで三味線も痛み、少ない収入から弦を切らないように慎重に演奏
する中では、最高の演奏は望めない。なおかつ数をこなしてなんぼの生活では
気を入れた演奏など続ける気力も生まれない。
そんな門付け生活で、いかに手を抜くかいい加減に演奏するかといった技は、
鍛えられるが、素晴らしい演奏など出来るものでは無いと語っている。
よく苦労の末に今があると言う。また、若いうちは買ってでも苦労しろと言う。
しかし、本当に苦労をした人は「買ってでも苦労しろ」という人に対して、
「そんなに言うなら売ってやる」と言いたくなってくるのではないか。
苦しさの中で、自分の限界を知る事は出来る。が、このままでいいのか?
本当に自分の音楽を聴いて喜んでいただける人に聴いてほしいという欲求が、
竹山を変えたという事が本書から伝わってくる。
竹山自身、中年期には三味線に限界を感じ、他の道を歩む事も考えた。
地獄を見る事は必要だが、そこからいかに自分を変えていくのか、また、自分
の路はどこにあるのか?それを見出して結果的に成功した人の過程がここには
在る。
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