NO,018

■ 毛沢東を越えたかった女

8月

著書:松野 仁貞
出版:株式会社 新潮社

ここのところ、仕事で中国に出張する事が多い。また中国人とも話しをする事が
多い。そんな中でちょっと気になったのがこの本である。

1970年代の文化大革命が終了し、資本主義世界との経済格差から修正共産
主義国にその路線を変更した中国は多くの成功者を生む。本来世界に躍進する
架橋の素地を考えれば、人民全てが平等であるとした共産主義は中国人の気質
から考えるとどうなんだろう?と不思議に思っていたのだが、やはり今の中国
が本来の姿なのだろうと思える。

ところで、その中国で今問題となっているのが納税違反である。
長い間、共産主義の中で過ごした国民にとって自分と他人のお金の区別や平等
(同じ金額)ではない納税について守らない人が多いのだそうである。
ちなみに今年上海に行った時、領収書をもらったらそれがスピードくじにも、なって
いた。余りに法人納税が守られていない為、政府が領収書用紙を発行しそれを、
スピードくじにする事で、お客が領収書を要求し帳簿のごまかしを少しでもなくそう
との政府の目論見であるらしい。
もちろん、くじの当たりの費用は政府が持つ。さすが中国、共産主義でも資本主義
以上の商売熱心である。そんな納税キャンペーンのスケープゴートになったのが、
本書の主人公劉暁慶である。

私生児で生まれた劉暁慶は、幼少時代の苦労から人よりも何か優れたいという
気持ちが強く、また負けん気も人一倍強かった。中国人の男性に聞くところによる
と多分世界一気が強い女性は中国の女性であると言う。その中でも主人公は人
一倍気位とプライドが高くまた挫けなった。そんな彼女があるきっかけで女優となり
中国10億人の心を掴む有名人となる。
文化大革命後の大幅な転換期に彼女は一等席の切符を手に入れる。
まさに「アメリカンドリーム」ならぬ「志就願大夢」である。

時代の転換期には、成功者と犠牲者が生まれる。
主人公劉暁慶はその最も分かりやすい例であると言える。しかし、この人こんな目
にもあってもめげずに闘い続けている。見方によっては中国版「おしん」かもしれな
いが、こちらは大変力強い。その意味で、毛沢東を超えたかった女性かもしれない。
この人、今後の中国でまた復活してきそうな人かもしれない。
ところで、今の中国を語るのにこんなに象徴的な人の事を取り上げない日本の
マスコミって何なんだろう?
















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空の写真 今月の本(2004)
面白かった本などを紹介します。
2004年に読んだ本の中からの紹介です。