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NO,005 |
■ ファストフードと狂牛病
1月
著者:エリック・シュローサー
訳者:楡井 浩一
出版:株式会社 草思社
世界的にスローフード運動が盛んである。しかし、そんな事にはまったく無関心の
国がある。我が道を行くアメリカである。そういえば環境問題で規制ルールを盛り込
んだ京都議定書に対してもNOと拒否した大国はアメリカだけである。
そんな国アメリカで、自由経済主義の行き着く先がGM汚染やBSE問題など予想外
の危機にいかに脆弱かを農産物の最大の引取先、ファストフード業界の実情を基に食
のモラルと消費者の安全について説いたのが本書である。
資本主義の最も大切とされるテーマ収益性を追求した結果、モラルの喪失と消費者
離れが起こりつつあるファストフードは、20世紀の遺物と著者は説いている。
西暦2000年は初めてファストフード業界の集客数が前年を下回ったそうである。
例えて言うなら高速道路を自動車が走る時、ギアを上げて燃費と時間を節約する。が、
急に坂やカーブの多い道に変わればギアを落としてスピードを下げる。これは常識で
ある。しかし、ファストフードに代表される急成長した産業は、燃費向上の為、元々
ローギアを用意していない。そのままのスピードで走れば事故を起こすであろうし、
スピードを落とせばノッキングが起こってしまう。これは今の日本の産業界でも同様
の根本的な問題ではないだろうか?
本書で語られるエピソードの中で思わず苦笑する場面がある。
例えばイギリスでBSE問題が発生した時、真っ先に真剣に対応したのは人間の食品
産業では無くペットフード業界だったり、現在唯一行われていないGM作物のジャガ
イモは、何故GM化されていないか?それは、生産物の半分以上の引取り手ファスト
フード業界がその取引を拒否すると宣言した事による。
たまたま本書が日本出版した直後にアメリカでBSE牛が発覚した。著者は間違い
無くアメリカでもBSEは発生すると予測していた。印象に残る本である。
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