渚の思想

NO,012

■ 渚の思想

4月

著者:谷川 健一
出版:株式会社 晶文社

どうもUKIは、海に向かうと心が大きくなる。
まさか海に向かって「バカやろう〜」と思わず叫ばないが、日本人の多くの方は、海
に対して心躍る兆候を発する事があるらしい。
そんな海=渚を主題にした本である。

民俗学の見地から、世界でも稀な、長い海岸線を持つ日本の渚と人々の関わりを著し
ている。面白い角度からの民俗学を紹介している。
渚と人との係わり合い、陸とその彼岸である海の向こう人は来世を思い過ごしている。
そんな事象を各地の「いわれ」を基に綴っている。
かつて、かの地から人は訪れその記憶が伝承され、そこは、沖縄ではニライカナイと
言い、龍宮とも蓬莱とも言う。懐かしい故郷がいつの間にか辿り着けない先祖の地、
所謂あの世となった地を渚を境にして対峙する、そんな漂着民の思想がここにはある。

そんな渚を境にして、産小屋・海からの漁労物の分配・打ち上げられた流木や海草・
産卵動物に対する思い・禊などをテーマに渚と人と精霊の係わり合いを著している。
著者の活動範囲が、関西から西にあるのか関東以北の話が少ないのが気のなるが、海
と民俗学の関連を考えた場合、柳田国男の「海上の道」へのアンサーソングならぬ、
アンサーブックと言える面白い切り口の本である。

ちなみにそんな渚に親しんでいる日本人が今、貴重な渚を破壊し渚から隔離されつつ
ある現状を嘆いているのは、著者だけでは無いと考えるがどうだろう。















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面白かった本などを紹介します。
2005年に読んだ本の中からの紹介です。