デブの帝国

NO,015

■ デブの帝国

6月

著者:グレッグ クライツァー
訳者:竹迫 仁子
出版:バジリコ 株式会社

近頃、お腹の脂肪が気になる。

そんなに食べていないのに、歳をとったからなのか運動をしなくなったからなのか、お腹の
脂肪が気になる。これを改善するにはまず、食事から考えようと思っているがついつい料理
の品数が何品かないと気がすまない。
若い頃に比べ食べる量は少なくなっているにもかかわらず、目が欲しがってしまう。

かつて、すこし痩せようかと思っていた時、アメリカ本土いわゆるメインランドという所に
たまたま出かけた。この国でも肥満は以前から問題となっていると聞いていたが初めて見る
彼の地の肥満の人達は、同じ肥満という言葉でも日本の肥満とはまるで、中身が違うという
事を思い知った。

アメリカがいかに肥満大国になったか?
いつから肥満が始まったのかそのきっかけは何か?
フリーの記者である著者は、アメリカの肥満大国に至った成り立ちからその影にある問題点
までをインタビューや過去の記事を基に著している。

この本を読むとアメリカの肥満の歴史はそう古くない事がわかる。ニクソン政権下で農場票
の安定を任されたアールバッツ氏の功績が大きい。
インフレの中、都市と農場の賃金格差が進み都市の消費者からは、低価格の食物を、農家か
らは収入アップを、さらには第二次大戦後自立して発展していく東南アジアと
の輸出・輸入バランスを保つ為海外からの安い輸入食物をアメリカ国内でいかに消費させる
か?といった難問にぶち当たる。

この矛盾した要求の答えが、食生活の変化であった。
消費者には、美味しいと感じるでんぷん質と脂肪質の料理の提供、ファストフードの普及に
よる食生活の変化。農家にはそれに応える低コストでんぷん質のとうもろこし品種の開発と
品種改良、機械化による大面積耕作、農薬の大量散布による労働コストの低減と収入絶対額
の増加。
さらに輸出・輸入バランスを保つ為には、低コスト脂肪源であるパームオイルの輸入とその
消費。反発しあう水と油を、攪拌して馴染ませ乳化させるような、手間の掛かる面倒な取り
組みであった。

この困難な取り組みを実現させる為に、アメリカがとった賢い方法とは?
それは、マーケティングである。
消費者の望んでいる料理とは何か?
その原料となるものは何か?
原料コストを抑えるにはどんな農作物が必要か?
いかに有利で売れる農作物は何か?
さらにそれを消費させるにはどのような食生活の変化が必要か?
その変化を消費者に受け入れさせるにはどんな販売方法が必要か?
その結果が、高いカロリー消費による肥満大国アメリカである。これは、常に勝ち続けなけ
ればならないアメリカの宿命でもある。













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空の写真 今月の本(2005)
面白かった本などを紹介します。
2005年に読んだ本の中からの紹介です。