NO,017

■ 焼肉は好きですか?

7月

著者:鄭 大聲
出版:株式会社 新潮社

今や朝鮮半島を代表する料理「焼肉」。
その生い立ちから始まり、「焼肉」だけではない幅広い料理の数々を紹介している。

まず「焼肉」の生い立ちは、モンゴル民族の侵入から肉料理が普及する。
さらにモンゴル民族の衰退後、国教を仏教から儒教に転換した事で肉料理は定着する。
儒教が肉料理を推奨していたとは初めて知った事である。
さらにカルビやタン塩以外の焼肉料理の数々、最近では食べられなくなったセキフェやホル
モン焼きの名前の由来の嘘など興味深い内容が綴られている。

朝鮮料理を大別すると、肉・漬物・スープ・穀類・酒となる。さらに宮廷料理と民衆料理に
分けられる。残念ながら著書には、この他の大切な要素である海産物が含まれていない。
同じ朝鮮料理でも、どちらかというと中央から北の料理という事になるのであろう。

元々の朝鮮料理には「焼肉」は存在しない。
肉を茹でる・鍋で焼くというのが主体である。今の「焼肉」は戦後、日本在住の朝鮮韓国人
街で生まれたものである。当たり前の事であるが、彼らは毎日「焼肉」を主食にしている訳
でも無い。

民族的にも日本人と近いせいか、食事の構造は、山野草を主体とした菜食と米・蕎麦・大豆
それと海草、各種醗酵保存食である。さらに肉と魚が加わる。
基本の部分は、いわゆる「日本食」と根の部分は同じである。
では、その違いは何か?
長い間、国の宗教として仏教が根付いた日本は大蒜や肉食を避けた。儒教を国の宗教とした
韓国・北朝鮮はそのタブーが無くさらに日本から入った唐辛子が熱烈の受け入れられて定着
した。結果、食文化の幅が日本より拡がったといえる。

ところで、この本を読んで朝鮮半島に肉食文化が定着したその理由はわかったのだが唐辛子
がこれ程定着したのはなぜか?
これに対する答えにまだ出会っていない。
どこかに、この事に詳しく触れた書物は無いものだろうか。















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空の写真 今月の本(2005)
面白かった本などを紹介します。
2005年に読んだ本の中からの紹介です。