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NO,022 |
■ 和船T・U
10月
著者:石井 謙治
出版:財団法人 法政大学出版局
どえらい本である。
海好きなUKIにとって、昔は海岸で良く見かけた木造船が最近はFRPの船となり、海辺
の風景が大きく変わってしまった。木造船=和船である。和船の形は記憶にはあるが、その
詳細については殆んど知らない。またそんな記憶も年を追う毎に段々と薄れていく。
はたして和船とは何ぞやと思っていた矢先に見つけたのが本書である。
よく時代劇で廻船問屋の米を積んだ船が登場する事がある。北前船とか北国船とか呼ばれて
いるが、実はそんな名前の船は存在しなかった。それどころか、当時そのような名称も一般
的ではなかったという驚きの事実から本は始まる。
では、何と言う名称の船だったでしょう?
正式名称は「弁才船」べざいせんと言うんだそうです。
また、一般的な海運の名称としては「桧垣廻船」というらしい。
江戸後期に完成されたそのフォルムと操舵術、極限まで切詰めた運営コスト大阪・江戸間を
当初3ケ月掛かった運送日数が、最後には50時間まで短縮された事、その為の工夫の跡。
その船の姿さえ今は伝わらず、間違った船が再現されている事実など、残しておきたい知識
と知恵と技術を伝えている。
沿岸海運に適した船を作る為外国の船を研究しながらも独自に完成されていった「弁才船」。
その帆の形から、追い風でしか航海出来ないと言われていた和船が外国のスキッパーと同様
に向かい風でも航海出来たという事実。今までの間違った知識を著者は丹念に詳細に噛み砕
いて伝えている。
ところで、いわゆるシップ(帆船)とジャンクと和船の違いは何でしょう?
答えは、シップはあばら骨のような構造に対しジャンクは間仕切り板の構造、和船は、梁の
ような骨格構造で出来ているんだそうである。
ちなみに著者は、沿岸航海では浅い港でも入っていける弁才船が有利であり遠洋航海では、
ジャンクに軍配を上げている。
また戦船は、「安宅丸」というんだそうである。読み方は「あたけまる」。
また何故船には丸が付くか?についても多くの説を紹介し、各々の説に対しここは弱いとか
ここは無理があるとか、ここはあやふやとか評論している。その評論の仕方、イチャモンの
つけ方がなかなか面白い。
ここまで詳細に、これでもかというくらいに和船の事を丹念に綴った本は、見たことがあり
ません。読んでいて著者の迫力をビシビシと感じる本である。
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