NO,024

■ 超かんたん 無農薬有機農業

10月

著者:山下 一穂
出版:株式会社 農村報知新聞

以前から日本の野菜の香りと味の薄さが気になっていた。
野菜とはこんなものだろうと思っていたのだが、海外に行って美味しい野菜を食べてから、
ひょっとしたらと思うようになった。
自分で野菜を作り始めてからは、やっぱりね!と思うようになった。
さらに、農業に関する様々な本を読んでからは、確信に近いものを感じるようになった。
この味の違いは、土作りに問題があると感じたからである。

狭い国土で生産量を高める為に使用された化学肥料、農家の手間を省く為の除草剤。
これらが長年使用される事で、耕地は荒れ、野菜の味は変わっていった。
さらに、薄く散布したとしても元来人体にも害を及ぼす農薬を長年摂取する事による影響
は、その結果が明白で無いとしても、使用後発生してきた現代病に対して何らかの影響は
あると考えるのが自然である。

では、どうすれば良いか?
化学肥料を使用せず有機農法を行えば良いのだが、その手間と成果物のバラつきから有機
農業を生業としている農家の方の収入は、どうしても低くなる。また、化学肥料や農薬で
ひ弱になった周辺の農家の方への虫害など、濃密な地域社会ではなかなか勇気がいる事と
なる。その結果、有機農業が叫ばれて30年以上になるのに有機農業はなかなか主流と、
ならない。

そんな中、Uターンで故郷に戻った著者が始めた有機農業は、成功してる部類に入る。
本書は、なぜ成功出来たか?どのように有機農業を実践したら良いか?について、かなり
詳しく書かれている。

消費者の立場で考える事、ビジネスとして農業を考える場合マーケティングは必須である
事、また農業の可能性を作物生産という観点からだけでなく、地域の環境保全と消費者の
健康を預かる業種と考える事など、これからの日本の産業を考えるうえで大切な視点だと
いう事が本書を読んで再認識出来る。

UKIが消費者の立場で考える農業の在り方は、周辺地域で無農薬有機栽培を行い、環境
保全も担う農家から野菜は購入したいものである。
また自分が生産者となる事を考えると、全てBtoCで生計を立てたと仮定するとその数量
は、最低200世帯が対象になると思う。
その点、著者のユーザーはまさにその世帯数でありUKIの思う農業モデルそのものの方
である。

ところで、著者は今まで良いとは言われてもなかなか主流にならない有機農業について、
以下の事がなされていなかったと指摘する。
曰く、マーケティング・ユーザー志向・有機農業技術普及・販売チャネル開発などである。
企業がこの要素を持たないと業績は悪化し倒産するのは目に見えているが、これでも成り
立つ今までの農業が存在していた事じたい不思議な気がするが、農家の世代交代と共に、
これから一気にこの問題は浮上してくるであろう。

ところでこの本、手間の掛からない有機栽培方法を具体的に伝えている。
さらには、付属のCD−ROMで写真付きで詳しく解説している。
堆肥の蒔く量など農家の方向けなので、UKIのような素人栽培では、その分量は計算を
し直す必要があるが、これは大変参考となる。


















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空の写真 今月の本(2005)
面白かった本などを紹介します。
2005年に読んだ本の中からの紹介です。