宇宙人としての生き方

NO,027

■ 宇宙人としての生き方

12月

著者:松井 孝典
出版:株式会社 岩波書店

とある時、とある場所のパーティで初めてお会いする方とお話をしていた時の事である。
話が環境問題になった時、その方から「こんな本がありましてね。見方が変わりました」
とお奨め頂いたのが、本書である。

本書は、人として生活していく上で、現代の課題である環境・人口・食糧の問題を宇宙の
成り立ちを軸に考えるという発想を基に書かれている。
この発想は著者が独自で考えていた事らしいが、最近たぶん同じ発想で(著者自身がこう
書いております)NASAが進めている概念としてアストロバイオロジーというのがある
らしい。NASAも進めている概念なので、我が意を得たり!と著者は思ったかどうかは
不明だが、ひとつ見方を変えてみましょうと宇宙・地球を軸に人間の在り方を綴っている。

概念のひとつとして宇宙の成り立ちから現在、さらに将来、地球が太陽に飲み込まれる中
での大きなシステムとして人間を考えると今の状況ってどんな事なのか?
考える機軸を変えてみると見えてくる事がある。
今までの地球システムは、太陽の恵みを受けて成り立つ安定した外部からのエネルギーの
流入を中心に賄ってきた。ところが、産業革命以降の人間の営みは地球内部の資源流入を
好きなだけ好きな時に活用する、いわば安定していない不安定な流入となっている。
これが、環境汚染・人口増大・食糧危機といった従来とは違った安定しない状態の結果と
なっているのだそうである。

では、安定したシステムが維持し続けられるのか?
実はこれも困難である。何故困難なのかという事を地球の歴史を基に著者は伝えている。
ガスの集合体であった太陽系がまとまり、太陽が出来、地球やその他の惑星衛星が生まれ
マグマが冷えて今の状態となったのだが、時としてまたマグマの状態に戻ったり、数億年
に一回の割合で飛来してくる巨大隕石で生物は、絶滅し、生き残った生命からまた進化を
遂げる。本来安定したシステムが存在しない中で「地球にやさしい」という概念自体が、
間違った発想だと著者は言う。

アストロバイオロジーの考え方だと、宇宙の時間軸に対して人間の時間軸は数千倍早いの
だそうです。このままだと、地球という器に収まりきれる許容はあと数百年しかないのだ
そうです。まあ、私はその頃まで生きてはいないが、この変化が宇宙にとってどのような
変化として継続されるのか?または、人間の営みがどのように変化していくのか?それは
変化の源である人間の在りようによって変わってくるのでしょう。

今、よく言われている環境・人口・食糧問題はともすると日常会話の共通話題であったり
お天気はどうですか?といった挨拶の言葉の代わりに使われている場合が多い。
著者は、「地球にやさしい」とか「地球の汚染を防ごう」といった考え方自体が間違って
いると指摘する。
「地球はけっしてやさしくない」「地球の成り立ちは酸素汚染から始まっている」だそう
です。人間の見方で地球を語るのでは無く、科学的に地球を語る事で今まで見えなかった
事が見えてくる。本書はそんな本である。

ところで本書には「知求ダイヤグラム」という図が多く登場する。
地球と知求を掛けた駄洒落かどうかはともかくとして、科学曼荼羅だなぁと妙に納得する
UKIでした。この図は奥が深い。


















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空の写真 今月の本(2005)
面白かった本などを紹介します。
2005年に読んだ本の中からの紹介です。