NO,001

■ おれんちでメシ食わないか

1月

著者:小町 文雄
出版:株式会社 光文社

家事でほぼ毎日行われる創造的な唯一の作業とは何だろうか?
それは、料理である。
最近は、お惣菜やケータリングなど自分で料理をしなくとも暮らしてはいけるが、人類が
日々の営みとして欠かせない行為であり、その分マンネリにならないように工夫し、考え
飽きないよう数々の料理を発明・創造する。日々最も頭を使う行為なのかもしれない。

著者が料理に目覚めたのは、崩壊寸前のロシアでの大使館生活。
統制化で食糧難の中、レストランもあまりない当地で、自活を行わざるを得ない状況から
料理に目覚めたのである。
またさらに、大使館生活というのは誰でもパーティに行かざるを得ないらしい。
これが仕事の一部となっている。親しくなった友人と、食糧難でレストランもあまりない
当地でパーティを開くには、家庭で乏しい食材を活用したそれでも楽しいパーティを行う。
そんな工夫さえすれば、誰でも出来るホームパーティ生活を過ごす中で著者のおもてなし
術は、次第に磨きがかかっていった。

折角のホームパーティだからと、考えただけで面倒になるような立派な料理を作るんでは
無く、お招きした方と会話も楽しめるような「ながら料理」をどう作ったらよいか?
自分の気持ちとパーティのTPOとそれを料理でどう盛り上げていくか?
わくわくしながら、料理を考え、素材を求め、パーティの演出を考える。大変楽しい趣味
である。

著者は、料理を作って人をお招きする事は、愛を分ける事であると訴えてる。
その方の事を思い、楽しい時間を過ごす工夫を考え、料理に驚いてもらい、おまけに料理
を褒めてもらうといった自分への嬉しさも加わる。愛は他人に振り分けるだけでは無いの
である。

ホームパーティの演出で、参考にもなり面白い趣向に「旅行に行った気分ごっこ」がある。
かつて訪れた海外の料理を再現し、BGMも当地の音楽で固めるというものである。
お招きした方がそこに行った事があろうが、無かろうが、この演出では自然と話題は当地
の話となる。それをどう発展させるかは、互いの教養と空気の流れを読む会話術である。
こんなパーティを積み重ねながら、その人その人に合ったパーティ演出、また会話の以外
性を目論んだ、互いに初対面同士の友人をお招きしたパーティなど日本人以外の方々が、
楽しんでいる催し物を何故、日本人はやらないんだろうと著者は嘆いている。

「おれんちでメシ食わないか」は人生を楽しむ為の簡単だが、奥の深い遊びと云える。


















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面白かった本などを紹介します。
2006年に読んだ本の中からの紹介です。