おいしさはここにあり

NO,018

■ おいしさはここにあり

8月

著者:永田 照喜治
写真:阿部 伸治
出版:株式会社 小学館

気になっていた永田農法だが、とうとうご本人登場の本をみつけた。
永田農法を打ち出し、永田農業研究所として農業指導コンサルティングを行った農家の方
を訪ね、各々、独自の他には無い付加価値の付いたおいしい作物を生産されている様子が
綺麗な写真と共に描かれている。

本書を読んで思うのだが、既存農法や有機農法とは異なった独自の全く違う次元の農法を
行っているなぁと感じた。植物の欲しがる要素を絞り込み必要最低限のものしか与えない。
その要素とは、窒素・燐酸・カリウムを最低限の量に抑えて液肥状にして根元だけに与え、
さらに土質が作物により、酸性かアルカリ性がいいのか、一日の寒暖の差が10度以上、
南西の海に向いた傾斜地で潮風も大切な栄養素のひとつである事を大切にしている点。
さらに突っ込んで地質学者並の知識を持つ、農業研究者は地質を知る事も大切な事だと、
改めて教えられる。
この絞り込んだ要素に基づいてその土地の作物を選定している事である。

既存農法のような窒素・燐酸・カリウムを与えるだけ与える肥満児を育てるような農法や
必要外の要素を多く持っている有機堆肥を主とした自然農法。時として完熟していない為
に作物や環境にも悪影響を与えかねない恐れがある農法。
各々その副産物としてシュウ酸という人体にも害のある栄養素を生みかねない恐れがある
のだが、それを発生させない事を主眼とした永田農法は、科学する農業として興味深い。

本書の構成は、指導した方を再度訪ねる旅である。
北海道のトマト農家、秋田の青大豆、新潟の棚田での酒米、栃木の緑茶を食べる乳牛、
太陽と潮風を受けて独自の野菜作りを行う高知の農家、火山灰を利用した長崎ホウレン草、
佐賀の石ころだらけのお茶畑、離島の気候を生かした長崎・沖縄のトマトとバナナ、
である。

ちなみに、同著者の本「おいしさの育て方」やこの前このコラムでも紹介した諏訪さんの
本「おいしさの作り方」など小学館「おいしさ」シリーズブランド三部作である。
ちなみに「おいしさの育て方」はまだ読んでおりませんが、近々読んで三部作制覇といき
たいところである。


















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面白かった本などを紹介します。
2006年に読んだ本の中からの紹介です。