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NO,019 |
■ 京の町屋
9月
著者:上田 賢一
出版:廣済堂出版
京都の話を探していたら、京都の町屋の保存運動にぶちあたった。
京都の素敵な景観である「町屋」を保存していこうという様々な試みが成されている。
彼らはけっして「町屋」を保存する事が目的ではない。そこに住まう人達が、いわゆる
「よそもの」が訪れる事=観光に重きを置くにではなく、そこに住まう人達がお互い関与
しあう生活空間の創造や互いの親密なコミュニケーションを保ちつつ、何か面白い事が、
起きないかという事を念頭に「町屋」を持つ人とそれを活用しようとする人達の仲立ちを
行っている。本書は、そんな人達の動機、出会い、実践を綴った書である。
町屋を活性化する為に生まれた「町屋倶楽部」そもそものきっかけがとてもフォークロア
である。このムーブメントの中心人物はお寺の若い坊さん、そのきっかけがとてつもなく
面白い。なぜこうなったか?大変不思議である。
この坊さん、布袋さんを集めるのが趣味であった。骨董市でやたら布袋さんを集めていた。
坊さんというとても目立つ井出達から、いつしか布袋さんを集める坊さんという事で大変
有名になってしまった。と、その途端市中の骨董屋さんの布袋さんの値段が上がっていく。
正しく需要と供給のバランスが自然発生的に生まれる資本主義ならではの光景である。
困った坊さん、半ば開き直りに近い心境から「寺で預かります」方式に変える。
預かるのだから、軍資金は必要ない。大変優れた坊さんの為のビジネスモデルである。
と、ところが、集まってきたのは布袋さんならぬショウキさん、京都では鬼瓦の放つ邪気
を跳ね返すショウキさん大変人気なんだそうである。
で、その人気のショウキさんがこんなに集まるにのにはその理由がある。真理を追究する
さすが京都の坊さん、色々考えました。
なぜ、ショウキさんばかり・・・・とその時、ひらめいたのが京の「町屋」である。
こんだけショウキさんが溢れるという事はそれを飾っている「町屋」が取り壊される事に
起因するだろうと考える。このままでは「町屋」が無くなってしまう。どうしよう?
と思いついたのが、維持出来なくなるのであれば、それを守っていく人達を探して持ち主
にお見合いさせれば良いのではと考えついたのが「町屋倶楽部」である。
京都の坊さんの趣味から始まったと言ったら、誤解が生じるが前述のような訳で始まった
「町屋倶楽部」。こんな事から、京都の西陣地区を中心に完全ボランティアで「町屋」を
維持していく活動をしている団体や、その他のきっかけは別にしてもこんな運動を始めて
いる団体はこの京都には多くいるそうです。偶然のきっかけから人生が変わる事もあると
感じる貴方、この本は大変勇気を与えてくれる本かもしれません。
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