幻のヤマチャ紀行

NO,023

■ 幻のヤマチャ紀行

11月

著者:松下 智
出版:株式会社 淡交社

日本の山郷には、古来より自家で賄う為に自生したお茶「ヤマチャ」を摘んで製茶にする
習慣があった。中国から持ち込まれ日本に定着したと言われているお茶だが、実はもっと
以前より日本に自生していたんではないかと思わてれるのが、この「ヤマチャ」である。

著者は丹念に山々を調査し、自生していたと地域で思われているこの「ヤマチャ」が実は
記憶に無いはるか昔に、先祖が丹精に種から植えた中国から持ち込まれたお茶である事を
確認する。
予想以上にはるか昔から、当時高価で貴重だったお茶の種や苗が山奥まで浸透し、日常の
生活に入り込んでいる様子を九州から関東まで丹念に取材したのが、この本である。
「ヤマチャ」の伝播の仕方として、焼畑農法の伝播と合わせて東進しているらしい。
これは、開拓民の初期の作業に取って大切な要素を「ヤマチャ」が担っていた事になる。
いわばルーツの習慣が、ルーツゆえに伝承から抜け落ち忘れ去られた結果とも言える。

ところで、いわゆる商売ではない製茶の手法はどんなものが残されているのか?
・釜で炒って水分を飛ばし、熱いうちに手もみして乾燥させる釜炒り茶
・蒸してから樽に詰めて醗酵させ、裁断して乾燥させる碁石茶
ちなみに現在栽培多くされている種類「やぶ北」は、下に火を入れた和紙の上に茶葉を乗
せて低温で揉みながら乾燥させる方法で製茶となる。煎茶に分類される種類である。
「ヤマチャ」の種類は、煎茶・晩茶・浸茶の三種類があると伝承されている。
現在では、この浸茶の手法が無く幻のお茶となっているらしい。

健康に良いお茶、また農作物の中で比較的収益率の高いお茶、案外古くから日本の各地に
浸透して行った外来作物だったらしい。

















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