NO,020

■ 建設帰農のすすめ

8月

著者:米田 雅子
出版:中央公論新社

著者は「NPO法人建築技術支援協会」理事にして「農林水産業から日本を元気にする
国民会議」幹事という肩書きを持つ現役の教授である。
建築と農林水産がどう繋がるか?
疑問に思って手に取ったのがこの本である。

日本の高度経済成長を支えてきた産業のひとつ、建築業はこれから需要安定化に向けて
成長が望めない。また、そのような労働人口を抱える地方の建築業は都会と比較して、
急激な衰退の道を歩んでいくであろう。
その労働人口をどのようにシフトしていくか?
そのシフト先として、労働人口の急激な減少が想定される地域の農林水産業はどうか?
というのが、この本の主旨である。

実際の例として多くの現場の方の言葉が、この本にはある。
その意味でこの本は、正確には著者:米田雅子では無くて編:米田雅子かもしれない。

ところでこの本、論調がユニークである。
普通こういう会に所属したら、良い事を羅列するものであるが、この本は違う。
テーマは建設帰農だが、そこに至る道筋は困難である。どんな困難があるのか?
現場では、日常どうなっているのか?また、国の制度により新規参入者に対する不完全
な現状はこんな事があるとかなり詳しく書かれている。

労働人口のシフトと互いの技術の継承という着眼点は素晴らしいと思う。
しかし、賃金コストの差や社会的意義が異なる労働者の気持ちとしてどうなのか?
この部分は、この本では充分には触れられていない。
その地域に住む以上、他の仕事が何もないよりマシという考えが支配する事が恐ろしい。
本来、農林水産業の雇用の関係と建設業という企業と雇用関係とは若干違った形で成り
立っていると思うんだけど。それを同じ尺度で移管できるんでしょうかどうでしょう?












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2007年に読んだ本の中からの紹介です。