NO,023

■ ラーメンの経済学

9月

著者:河田 剛
出版:株式会社 角川書店

有りそうでなかなか無い本の題名である。
こういうの題名の本、弱いんだよね。思わず手に取る。

人間、本業ではない好きな世界になると俄然夢中になるもんである。
この本も読んでいるとひしひしとそんな情熱を肌に感じる。著者のエネルギーというか
気の強さというか、本当に好きなんだろうなぁという思いはが伝わってくる。
サプリメントのように元気が湧いてくる本である。
ちなみに、活性度を測る方法として「にちゃんねる」での荒れる度合いというのがある。
何でもラーメン板は、電車板に次ぐ荒れるジャンルだと著者は言っている。
鉄っちゃんには負けるが、いいとこ付けてるぞ?という活性度を喜びに変えてしまって
いるところなど、ホントに好きなんだろうねぇと思ってしまう。

本書は、経済学というタイトル通りラーメン業界の事を詳しく書いた専門書ではあるが、
お堅いタイトルとは裏腹にラーメンに関するこんな事知ってる?的なカルト的な細かい
事が綴られている。ラーメンに特に興味が無い人やこんなラーメンの知識を知っていた
として、多分日常生活のプラスとなるとは思えないような事があらゆる角度から語られ
ている。

ところで、ラーメンとはまったく関係がないが、本書の構成で感心する事がある。
まずは書き出し、くすぐりである。思わず読んでみるかという気にさせる。書き出しで
読むのやめようかと思う本は案外多く、その手に限ってそれでも読み続けて失敗したな
ぁ〜と思わせる確率はかなり高い。
また、グラフの作り方である。数字に忠実なあまり、このグラフで何が言いたいんだと
思ってしまうグラフはとても多いが、本書は違う。これって勉強になります。
著者は金融リサーチを本業としているせいか、報告書作成やプレゼンテーションの機会
が多いんだろうなぁ〜。そんな中で鍛え上げられた技を感じます。

さて本書の中身でだが、
ラーメンの市場性や取り巻く環境、歴史、情報媒体としてのインターネット、味覚嗜好
の変化といった流れで語られている。
現在のラーメンブームは戦後3回目であったり、市場性は飽和状態であり専門性や特殊
性も低いが撤退も容易な業態構造であったりとへぇ〜!そうなんだぁ〜と思ってしまう。
逆に言えば、急激な市場拡大も無く減少も無く時代によって変化はあるものの何時でも
いつの時代でも存続し続ける業種であると言える。
常に新しい何かが生まれ、何かが消えていくからこそ、いつでも話題性があるラーメン
なんだろうなぁと本書を読んで感じてしまった。










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