NO,025

■ そば往生

10月

著者:石川 文康
出版:株式会社 筑摩書房

著書を読んで、そうか何故今まで気が付かなかったんだろうという思いを抱いた言葉が
あった。「蕎麦は中毒になる」この言葉である。
ある時、無性に蕎麦が食べたくなる時がある。それも蕎麦なら何でもよいかというと、
そうではない。いつかたべたあの蕎麦が食べたいのである。
不思議と蕎麦の味というのは覚えているものである。蕎麦粉と時として小麦粉、水の組
合わせという単純なものだが、蕎麦の味というのはその店その店で微妙に味の違うもの
なのである。
そんな蕎麦がある時、突然食べたくなってくる。これは中毒であろう。

そうだそうだと読み進んでいくうちに、著者の心地よい語り口に嵌っていく。
この人、本当に蕎麦が好きなんだろうなぁと感じてしまう。
讃岐うどんに熱狂的なファンがあるのに比べ、蕎麦には秘めながらも、深く静かに熱い
思いを抱いているファンがいる。
そんな蕎麦好きの声がこの本を読んでいると聞こえてくる。

前半は蕎麦のうんちく。後半は蕎麦を食べる旅の話である。
かつて、京都で美味しい蕎麦を食べる事が出来なくて自ら蕎麦打ちを始めた事、出雲や
越前そばなど日本海側の蕎麦処の旅、江戸の蕎麦、山形・福島東北の蕎麦、各地の蕎麦
を堪能しながら本当の蕎麦の味を求めていく。

なかなか奥深い本である。










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空の写真 今月の本(2007)
面白かった本などを紹介します。
2007年に読んだ本の中からの紹介です。