NO,008

■ スローフードな日本!

3月

著者:島村 菜津
出版:株式会社 新潮社

お馴染み「スローフードな人生」の島村 菜津さんの本である。
2006年の環境・農漁業の実情を知るには、最適の本である。

戦後、日本は急激にその食卓風景を変えた。
有史より多くの海外のものを取り入れ、日本人の体と風土に時間をかけて変化させ取り入れ
食材とその料理法を「日本風」とさせてきた日本の食文化は、戦後40年の間に様変わりを
する。その付けが環境破壊であり、肥満をはじめ各種成人病であり、アレルギーや癌などを
引き起こす。
また、世界規模で作物種子が大手数社に特許として牛耳られ、税金のごとく農業従事者から
搾取する時代となった。

そんな中でも、古来からの安定した手法を取り入れながら地域の交流と自給率を上げていく
試みは、各地で見られる。
本書で取り上げられている事例として、
・大根が取り持つ都市近郊の市民参加農園
・アイガモ無農薬米
・国産非遺伝子組換え大豆を巡る様々な活動
・森を守り、海を守る蛎養殖
・安心な牛乳と乳牛飼育
・環境汚染から脱出から立ち上がった地域と環境保全の町「水俣」
・土から離れている不安とそれを癒すグリーンツーリズム

本書で、一番印象が残る言葉はあとがきにある。
日本は40年間、食糧難から這い上がろうと必死に頑張ってきた結果、経済大国となったが
食べ物を自ら作る事が出来ない人が多くを占めるようになった。
作物を育成する、土に接する機会がなくなる事に対して、人間の本能として漠然とした不安
が生まれてくるのではないか。また、季節感のない作物を食べる事にも同様に人間の本能と
して我慢できない感情が生まれてくるのではないか。
たしかに土に触れて作物を栽培し、収穫する歓びは何者にも変え難いものだし、旬の薫高い
作物を食べる事で季節を感じる爽快感は、他では味わえない。

2006年の日本とその周辺の食に関する現状を著している。
日本古来からある「スローフード」とそれを生かした日本の「スローフード運動」の今を
切り取った本である。GMや食品添加物、農薬など様々な口に入る未知の食材、そんな中に
あって、昔からの経験と実証による安定した手法での農・漁業に取り組んでいる方々の活動
の様子を伝えている。
昔はこんな事があったんだぁと過去形でいえるような日本になって欲しい。














前のお話へ
次のお話へ


空の写真 今月の本(2007)
面白かった本などを紹介します。
2007年に読んだ本の中からの紹介です。