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NO,012 |
■ 車いすの旅人が行く
11月
著者:木島 英登
出版:株式会社 講談社
バリアフリーからグローバルデザインへと言われてかなりの時間が経過している。
でも、本当にバリアフリーとなったのだろうか?
実際に、車いすを日常の道具として活用している障害者である著者が北は北海道から、南は
沖縄、石垣島までを車いすで体験した記録が本書である。
JRなどの交通機関、公共施設、ホテルやレストラン、映画館やスタジアムなどの施設を、
車いすで巡ってのバリアフリーの現状をレポートしている。
何故、わざわざ設定したのか理解に苦しむようなステップの段差や、判りづらいエレベータへの
アプローチなど、バリアフリーが叫ばれる中でとりあえずの対応はあるものの、車いす
の視点から見ると何の為のバリアフリーなのか?と思われる事象が、この本を読むと見えて
くる。
バリアフリー法が施工された当時の対応の混乱や、トラブルを回避したいが為の車いす利用
者への施設利用を断念させるような対応など、責任を負わない事を第一義とするサービスの
不在がここにはある。
その反面、過剰な対応もある。
本来、健常者以外の人も施設を利用できるようにする為のバリアフリーであって、基本的に
は介助無しで利用出来るものである。これに対して本人の意思とは関係無く介助されるのが
義務であるような施設職員の過剰な対応。時としてその態度は傲慢にも映る。
ところで著者は、全ての場所でバリアフリーの施設が必要だとは言っていない。
自分自身で行動出来るようなバリアフリーの施設は、プライベート空間や多くの人が集まる
公共空間では必要だが、古くからある日本家屋や景観上からエレベータやスロープを設ける
事が出来ない場所などもあって良いと言っている。
数段の段差がある場所などは、廻りの人3人が数十秒担いて頂くだけで乗り越えられる。
階段が上がれないのであれば、1階に障害者が利用出来るような構造とすれば良い。
助けて欲しい時、廻りの方が自然と手助けをする。心のバリアフリーが施設のバリアフリー
にも勝るという事がこの本を読むと本当に良く判る。
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