離島と旅する

NO,006

■ 離島を旅する

5月

著者:向 一陽
出版:株式会社 講談社

紀行文というのは良いね。
書いてる著者自身もどうなっちゃうんだろうと思うような筋書きといったものが無い。
その点、著者の体感した内容と感情が、読者が同様に感じる内容と近いものがある。その点
において、紀行文というのは著者の言いたい事を、割合読者も素直に受け止める傾向がある
んではないだろうか?また、読者も、あたかも自分が行ったような気にさせてくれるような
紀行文を望んでいるだと思う。

南は琉球より始まる日本の離島の旅、鹿児島と沖縄の間や長崎五島列島、壱岐、対馬、
日本海沿いを北海道まで昇って、佐渡、利尻、礼文、今度は南に下って伊豆七島、それから
小笠原、最後が青ケ島と日本の離島を旅したルポルタージュの本である。

著者は、共同通信社社会部長や論説委員などを務める。
文章にブレが無い。その職歴か、どちらかというと淡々とした冷静な語り口簡潔にポイント
を押さえたどちらかというと記事に近い文体だが、よく読んでいくと、その中から重く強く
伝わってくるところがある。きらきらとした輝きはないが、時折ギラっと光る燻銀のような
そんな文体である。

本書は、離島について大体のところを制覇されているが(これ、考えてみれば時間がかかる
凄い事だよね)今度はぜひ、瀬戸内海の島々を丹念にスケッチして欲しいなぁと思う。
本書でも出てくるが、人は終の住まいを考える時、気候が良く暖かで静かな処を選ぶらしい
さらに言うなら、そんな静かでひなびた処でもちょっと足を伸ばすと生活に便利な地方都市
があるところが良いに決まっている。
そう考えると、瀬戸内海の島々なんて最高なんではと思ってしまう。
早くそんな観点で瀬戸内海の島々をルポした本が出ないかなぁ〜。





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