世界の料理 アメリカ編

NO,008

■ 世界の料理 アメリカ編

9月

著者:本間 千枝子 有賀 夏紀
出版:農文協

世界の食文化シリーズ、全20巻あるようだけれどまだ全部は読み終えていない。
執筆者は海外での生活が長い研究員や客員教授であったり、作家であったりとその地の風習
・文化を長期間調査している方々のようである。
その中で、特にアメリカ編は興味深い内容なので、ここに取り上げてみた。

パックスアメリカーナ=アメリカの力による平和が言われて約4半世紀が経過している。
その力とは軍事力や経済力にあるが、その圧倒的な食糧と食文化の普及にも現れている。
新世界を求めて新たな地に降り立った、最初は教条的で極めて保守的な食習慣しか持たなか
った人々が、いかにしてアメリカの新しい地の食物を取り入れていったのか?
そんなアメリカの食の歴史を文化を本書は著しているが、その中で初めて知った事も多い。

移民初期時代
・今のアメリカに残る古き良き時代の風習、ホームティーパーティをする場合に各自が料理
 を一品持参する「ポットラッチ」が原住民の風習であった事。
・メイフラワー号でやってきた最初の移民が、持参した作物の種がアメリカの地で育たずに
 食べるものがなくなってしまう。その様子を見た親切な原住民が、教えた自生する作物や
 海産物をキリスト教の教えに無い食物だとして口せず、結果的には多くの人が餓えや病気
 で死んでいった事。ちなみにこの人達「ピルグリム」というんだそうです。
・メイフラワー号でやってきた人々が一年を経過し、秋の収穫を祝った「感謝祭」の料理は
 その殆んどが原住民が作った料理である事。ちなみに新天地での新しい食材である七面鳥
 は、この時テーブルを飾ったメイン料理である。
・新天地での甘味料にはメイプルシロップがあり、アメリカ人にとっては郷愁を誘う食材で
 ある事。ちなみに本書では触れてはいないが、開拓時代はリスも食べていたいたらしい。
 これは、ローラの「大草原の小さな家」に書いてある。
・東海岸地方で今も親しまれている「ニューイングランド・クラム・ベイク」は、金属器を持たない
 原住民が砂浜で海草の間に食材を入れて火を炊いた料理がルーツである事。
 ちなみにニューイングランド地方に住む人、または出身者の事は「ヤンキー」というんだ
 そうです。これは料理とは関係ないか。
・最初の料理は、「ボストン・ベイクド・ビーンズ」と「ボストン・クラム・チャウダー」と「コッド・
 フィッシュ・ケイク」という鱈とじゃがいものマッシュに卵を入れて丸めた揚げ団子だった事。
・移民初期時代で忘れられない出来事「ボストン茶会事件」。
 何で茶会事件と呼ばれていたのかわからなかったが、本来のタイトルである「ボストン
 ティーパーティ」のパーティという意味に徒党を組むという意味があって成る程と思った事。

南部の時代
・川や沼のなまずやザリガニを使ったケイジャン料理。
・郷土の料理「カロライナ・ホッピング・ジョン」という豆料理。
・クリオール料理である「ジャンバラヤ」「クローフィシュ・パイ」「フィレガンボ」
 クローフィシュはざりがにであり、ガンボはオクラ。

都市化の時代
・19世紀になると手軽な保存食が多く発売される。
 簡単な朝食、オートミールのブランド化の元祖「クエーカー・オーツ」。
 ジェームス・ジョンソンという医師が健康法として推奨した「グラニュラ」。
 サナトリウムでの健康食から生まれたのがシリアル「ケロッグ」。
・カウボーイが先導する「ロングドライブ」と言われた放牧と移動から鉄道による運搬に
 代わり、金額が安くなった牛肉が普及したおかげで生まれた「ステーキ」と「プライムリブ」
 アメリカはローストビーフとは呼ばずにプライムリブという。
・戦争での携帯食缶詰で成功を収めた「ハインツ」と「キャンベル」。

新たな移民食の時代
・母国で味わえなかった食事を豊な国アメリカで実現したイタリア移民食。
・「コーシャー食品」や「ボルシチ」をアメリカに持ち込んだ東欧ユダヤ移民。
・「じゃがいも料理」や「ハンバーグ」「コンビーフ」を持ち込んだアイルランド移民。
・アメリカ北東部中心に拡がったギリシャ移民の経営による「ダイナー」。
・1893年シカゴ万博で注目された初めてのキャフェテリア方式のレストラン「オナーハウス」。
・1921年カンザス州ウィチタに一号店がオープンした、ウォルター・アンダーソンが
 創設したアメリカ最初のレストランチェーン「ホワイト・キャッスル」。
 ちなみにこのウォルター・アンダーソン、「ハンバーガー」の生みの親でもあるらしい。

ファストフードの時代
・「ホットドッグ」で使用されるソーセージ製造の大手、「オスカー・メイヤー」の成功
 した宣伝手法であるソーセージ型自動車。
・1906年、ニューヨークで開店したアメリカ最初のピツァ店。
・1940年、カリフォルニア州サンバナディーノに初めて出来た「マクドナルド」。
 ちなみに「ケンタッキーフライドチキン」はその前年初出店。
・クリームチーズの大手「クラフト」が仕掛けたチーズを挟むベーグルの普及。
・1977年にテキサス州の食べ物となった、メキシコ料理でもある「チリコンカーン」。

恐慌の時代と家庭料理
・家庭料理の普及に貢献した主婦向け雑誌「レイディズ・ホーム・ジャーナル」「グッド
 ハウスキーピング」「ベター・ホームズ・アンド・ガーデンズ」「ウーマンズ・ホーム
 コンパニオン」と製粉会社「ウォッシュバーン・クロスビー」社(現「ジェネラル・ミ
 ルズ」社)が仕掛けた架空の料理アドバイザー「ベティ・クロッカー」。
・クラレンス・バーズアイが極寒のラブラドル地方で仕事をしていた時、凍った魚は解凍
 しても新鮮である事に気付き冷凍食品を製造する事となった「ジェネラルシーフード」社。
・冷凍食品を製造する「スワンソン」社が1951年に発売した、冷凍技術と家電普及が
 生んだ「TVディナー」。

現代の食カルフォルニアキュイジンの時代
・1971年、バークリー市に開店した安全な自然の作物を取り入れたレストラン、
 アリス・ウォータースの「シェ・パニース」。
・見直されるシルヴェスター・グレアムの100年以上も前に提唱した栄養学。
・ビール酵母とスキムミルク、ヨーグルトと小麦胚芽、糖蜜によるダイエットを推奨する
 ゲイロード・ハウザー。

ところで、保存できるたんぱく質豆の原産地は大きくみっつに分かれる事を知ってました?
アジア大陸では大豆、ヨーロッパ・アフリカ大陸では蚕豆・レンズ豆・ひよこ豆、新大陸と
呼ばれるアメリカ大陸からはインゲン豆・落花生が各々の原産である。





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空の写真 今月の本(2008)
面白かった本などを紹介します。
2008年に読んだ本の中からの紹介です。