NO,004

■ 日本史謎解き紀行T〜X

2月

著者:関 祐二
出版:株式会社 ポプラ社

歴史物は好きである。
その国の形、我が故郷の成り立ちはどうであったかのか?特に古い歴史を持っている日本
に生まれたなら、複雑でまだ充分解明されていない歴史に思いを寄せる事は、与えられた
贅沢な時間かもしれない。そんな思いも込めて、外国の国の人に日本の歴史を説明出来る
ようにならなくてはいけない。と日々思うのである。尤もその前に外国の国の人に伝わる
よう英語くらいはマスターしていなければならないけど・・・

では、遺跡発掘などによる新しい発見から、その時々により解釈が刷新される歴史の情報
にはいつもアンテナを立てていないと取り残されてしまう。
歴史という真実はひとつだが、その真実に迫る歴史書というのは何時の時代でも新しい本
が生まれ、尽きる事が無いアイテムといえる。
ゆえに、いつでも新しい作家や新説が生まれてくる。
そんないつの時代でも生まれてくる新しい作家の中で、最近気に入っている作家が本書の
著者である。

何となく本を手に取った。
本を選ぶ際には本のタイトルからというのは、我がセオリーだが、今回もそうである。
タイトルからして作家はミステリーを専門としているのかなぁと思ったんである。
ではなぜミステリー作家だからかというと、これも歴史物では好きな作家である井沢元彦
の本業がミステリー作家だからである。ミステリー作家が歴史を追いかけると、本業での
論理ロジックが歴史の検証をする場合に役に立つ事が多いように感じる。
で、本書のタイトルも何となくミステリーっぽいなぁ〜と思ったのが、本を手に取るきっ
かけとなった訳である。

本を開いて少し読んでみると、まるで「るるぶ」を読んでいるかのごとく旅行の本である。
それも、乗り物に関する妙に詳しい考察や目的地への到着時間から逆算するとどのルート
でどの電車に乗ったら楽しいか安いかなど歴史とはあまり関係ない内容が飛び込んできた。
しかし、その内容がこれまた妙に匂うんで有る。マニアの匂いといったらいいのか?
また、さらに歴史スポットに行ったら、ここのお店はお奨めといった観光案内まで触れて
いる。今まで読んだ歴史書にはありえなかったパターンである。
本書を読み始めて2時間ほどたってから気が付いたが、本のタイトルどおり本書は、紀行
だったんである。

本書の構成として、ヤマトから始まり出雲、九州、中国、関東と続いている。今後も他の
地域を紀行した本が上梓されるんであろう。
また各編、考察を元に各地を紀行し、自らの体験からあたかも自分が旅行に行ったような
気にさせてしまう。またその部分、歴史とは直接関係無い内容の部分になると、妙に筆が
進むというかリズムが出てくる。時として脱線しそうな面白さが実は本書の魅力でもある。
著者は多くの講演を行っているようだが、その時の客受けの良いネタをうまく本にも散り
ばめているんであろうか?
兎も角もこんな歴史書は読んだ事が無い。
お奨めである。

最後に本書は歴史書である。
多くの文献と自らが現地に出向き、その地に立って、その時当時の人はどのような思いで
行動したのかといった考察を同じ目線で歩きながら感じ取っていく手法を用いている。
その感じ取った著者の素直な感覚は共鳴出来る。
ちなみに著者とUKIは同世代である。
よく本を読んで考察しているよねと感心してしまう。尤もそれが歴史のプロだからだろう。
さらに言うと著者はミステリー作家ではありませんでした。おまけに言うと旅行作家でも
ありませんでした。歴史一本の作家でした。







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2009年に読んだ本の中からの紹介です。