応神=ヤマトタケルは朝鮮人だった

NO,005

■ 応神=ヤマトタケルは朝鮮人だった

 4月

著者:林 順治
出版:株式会社 河出書房新社

またまた、タイトルで思わず手を出した本である。
「天皇は朝鮮半島からきた弥生系渡来人の先祖である」という事を正面切って書いた
本を今まで見た事が無い。
本書は、ズバリその事をタイトルにした本である。

西暦300年頃、三国志の時代が終わり普が中国を統一する。
この間、戦乱に乱れた中国からの難民が朝鮮半島や日本に流れてくる。その影響を
受け朝鮮半島も多くの国が出来、互いに勢力争いを起こしここでも難民が日本に流れ
てくる。
多くの大陸系難民が九州から関西まで押し寄せてくる。
そんな難民は、土着の日本人から見れば最新の技術と文化を持った先進の人々である。
また、その数も数千人単位でやってくる。その難民グループが、新しい生産性の高い
農業と統制の取れた社会システムを持って君臨していくのは、自然な姿である。
そんな中で本書は、西暦350年加羅系渡来人として最初の天皇グループが渡来した
としている。

ちなみにこの加羅という国、ウィキペディアで調べると朝鮮半島の一番南に位置し、
昔学んだ「任那」に当たる。
私見だが、当時南朝鮮から九州にかけての小国郡を「倭」と呼んでいて、大陸からの
難民が段々と南に追いやられ、トコロテン式に「倭」の人達が、九州から関西に移動
してきたのをいわゆる「東征」というんではないだろうか?

本書はそんな時代、国の存在が危うい加羅から、最初の渡来系天皇グループが日本に
やってきたとしている。
その後、西暦461年百済系渡来集団が天皇家に婿入りする。
そして、この婿の弟が跡を継ぎ、継体天皇になったとしている。
その後、継体天皇死後後継者争いが起こり、古事記に記されている時代となる。

本書で注目したいのは、古代日本の政治の成り立ちについて、日本の文献だけでなく、
中国や朝鮮の文献を年代別に並行に並べて比較しながら紐解いている点である。
従来、中国の文献は重要視されていたが、朝鮮の文献について触れている本は多くは
無い。そんな中での本書の位置は大変面白い。

最後に、今まで述べた内容を年代別に要約した年表が付いている。
これは、もう一度整理して考えましょうという意味で大変嬉しい。



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