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NO,002 |
■ 日本人を考える
1月
著者:宮本 常一 他
出版:株式会社 河出書房新社
民俗学の巨人 宮本常一と7名の著名人が各々対談した対談集である。
7名の著名人とは、向井潤吉・大宅壮一・浦山桐郎・白井吉見・草柳大蔵・清水
融編・安岡章太郎・野間宏・青木一である。
そんな著名人と地方の習慣や過疎、農村経営、旅、差別、子育てなどを語っている。
宮本常一の本を読んでいて共通する空気がある。
どこかに忘れてきた記憶の奥にあったかなかったか?でも何か懐かしい想いの古の
日本の生活の様子が浮かんでくる。
今はもう無くなってしまった習慣や風習などが詳しく語られているのである。
これは、全国を旅して誰でも打ち解けてしまう宮本常一の才能によるところが大きい
のだろうが、その結果として色々な事が見えてくる。
具体的な例として、
・旅籠で泥棒が絶対に手を出さない場所が枕元のマッチ箱、符丁のような決まりごと
・気に入った男と所帯を持つと決まった女性は、今まで夜這いに来た男に白足袋を配る
・幕末に全国の寺子屋が16,000箇所もあり、現在の小学校の数とあまり変わらない
・綿や麻の衣服が無い時代の素材 カラムシ
・各地にあった年宿や善根宿などの無償宿
・土地を持たないサンガが部落民として差別されるようになった歴史
・下層民への差別だけでは無い上層民への「キツネ持ち」という差別
・東南アジア一帯にある嫁入りの際植える柿ノ木の風習
今はもう無い様々な人の営みがこの本から見えてくる。
出版されたのは70年代後半の高度成長期の頃で、古くからあるものが失われていった
時代だと思われるが、ここに書かれている時代の検証の中身はすぐ目の前にあった事の
ように新鮮かつ中身が濃いものとなっている。
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