食べてはいけない!

NO,003

■ 食べてはいけない !

2月

著者:森枝 卓士
出版:株式会社 白水社

以前から気になっていた事があった。「ビーフカレーはインドには存在しない」という
事である。
所謂、禁忌食の事である。

人間は本来雑食性の動物である。幼児はなんでも口に入れたがる。日本人に食べられて
アラブ人が食べて体を壊す事は無いはずである。でもしかし、食べられないものがある。
なぜ、食べられないのか?食べてはいけないのかを語っているのが、本書である。

著者は、フリーの報道カメラマンとして世界各国を廻っている。
その経験から、ジャーナリストという側面と食文化を中心にその国の特長を探る文筆家
でもある。で、本書は報道カメラマンの顔では無く食文化作家として世界の食について
語っている。

そもそも、「食べてはいけない!」はなぜ生まれたか?
著者はその理由として、以下挙げている。
@ 収穫するエネルギーが収穫した食物から得られるエネルギーを越えてしまう場合
A より少ない資源を循環して得られるサイクルから外れてしまった場合
B 自然環境上生産出来ない食物
C 差別性

@は虫食、虫の多い東南アジアでは食べられるが、虫の少ないヨーロッパは食べない。
Aは人間と同じ食物を好む豚、逆に羊や山羊は荒地の草でも育つので禁忌食ではない。
B極地での酒作り、尤も慣れていないのでロシア人やイヌイット人はアル中が多い。
C鯨や犬など 

著者が禁忌食を語っている中で、興味深かった事がふたつある。
ひとつは差別性、一概には言えないとした上で根本には自分達の習慣に無いものは排除
する。自分達が正しくて他が正しくないという思想があるのではと語っている。
また、もうひとつはなぜ「食べてはいけない!」となったのか?を想像する事が他民族
を理解する事に繋がっていくと語っている。

最後に「インドにポークカレーはあるか?」との質問に「無い」と答えた方はインド通
「ある」と答えた方はもっとインドに精通した人とのコメントがある。
これって何故って興味を持った方は本書を読む事をお奨めします。
答えは本書に書いてあります。



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面白かった本などを紹介します。
2011年に読んだ本の中からの紹介です。