「忘れられた日本人」の舞台を旅する

NO,002

■ 「忘れられた日本人」の舞台を旅する

  1月

著者:木村 哲也
出版:株式会社河出書房

ここにも宮本常一に魅了され、その軌跡を探る旅人がいる。

渋沢敬三が設立したアチックミューゼアムが日本常民文化研究所と名前を変え、神奈川
大学に場所を移し、その大学で学んだ著者が、宮本常一が「忘れられた日本人」の中で
描いた土地を歩く。

かつて、同じように宮本常一が歩いた地を旅する本を上梓した人に毛利甚八がいる。
以前取り上げた「宮本常一を歩く」がそうだが、本書は、それから約十五年が経っている。
今後も定期的に何年か経過した後、宮本常一が歩いた地を訪れ土地の人の日常の話を聞き、
時代の変化を綴っていく事が継続していったら、それはとても大切な事だと思える。
本書の著者のように今後も「宮本常一を歩く」人が、続いていく事を期待する。

ちなみに全国の人文資料館には膨大な資料が眠っている。けれだけインターネットが浸透
したのだから公開してもいいのではと思われるが、個人情報が記載されているせいか公開
されてはいない。
宮本常一が歩いた地を訪ね、人文資料館で資料を閲覧し、土地の人の話を聞き、風景を見、
宮本常一や毛利甚一や木村哲也の時とどう変化したのか感じる事も新しい旅行のスタイル
だと思える。

最後に著者は、周防大島に移り住み、宮本常一の残した資料を一堂に集めた周防大島文化
交流センターの学芸員となる。
自分のライフワークがそのまま仕事になるなんて幸せな人生である。
因みに周防大島文化交流センター一度行ってみたい。





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面白かった本などを紹介します。
2012年に読んだ本の中からの紹介です。