NO,005

■ コメほど汚い世界はない

  2月

著者:吾妻 博勝
出版:株式会社 宝島社

日本でもやっと体当たりの「食」に関するルポルタージュの本が出てきた。
この勇気ある行為は称賛に値する。

本書は、お米の生産・流通に関して常識では考えられない嘘といい加減さをこれでもかと
いう程、伝えている。
その内容は、
・その実態を隠して販売されている石油汚染米・燻蒸米・被爆米・線路米・カドミウム米。
・偽ブランドや古米、事故米を密かに混入させて利益を上げるライスロンダリング。
・農政事務所のいい加減さと業者との癒着。
・本来は農家の為の農協が、農協の為の農家に変化した訳。
・農地転用でボロ儲けする偽装農家。
となっている。
なお、海外ではこの手の本は著者自身が潜入した上で、事実を確認し告発するという手法を
とっているのが多いが、本書は、匿名インタビューでまとめられている。
この点は、まだまだ海外のルポルタージュの本と比べて弱い点でもある。

本当にこんないい加減な世界があるのかと疑いたくなる。
以前より、日本は「緩い」と海外の一部の人からは指摘されてはいたが、震災後の東京電力
と政府の対応を見ても、競争に晒されないで複数の世代が入れ替わった世界が、いかにいい
加減で「緩い」かは、そうだろうなぁ〜と思ってしまう。

その「緩さ」の本質は、自分達は選ばれた人間であり他の人とは違うんだという特権階級的
な意識、疑問に思った事を指摘する事を極端に嫌う体質にする人材育成、また、責任を回避
する事が、自分達の存続する唯一の理由となっているいわゆる「お役所仕事」。
その結果として、自分達を養っている税金を払っている国民が死のうが、職を失おうが関係
ないという意識。
さらには、その現状維持の体質から変化に対応出来なくなり、結果、経済は低迷して税収が
減り、それを穴埋めする為に多くの借金を次の世代に負わせる体質。
小学生でも、お年玉をもらって小遣い帳に3万円のお年玉に対して6万円分のおもちゃを、
買ったとしてお金が足りなくなったので、ツケにしてもらうなんて事はやらないだろうが、
そんな経済感覚も無い政府。
本当にこの国はどうなってしまうんだろうと思ってしまう。

多分、本書と同様の話はまだまだあちこちにあるだろう。
この国の春はいつ来るんだろう。





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