フードインク

NO,006

■ フードインク

  2月

著者:エリック・シュローサー、マイケル・ポーラン 他
編者:カール:ウェーバー
訳者:中小路佳代子
出版:株式会社 武田ランダムハウスジャパン

「安くておいしいしい食物にはあぶない秘密があった」
こんな出だしから始まるのが本書である。

日本でも2011年1月からロードショウが始まった、アメリカのドキュメント映画の
監督が映画を作った過程や、それに係わった人たちへのインタビュー形式で進みのが
本書である。

主なテーマは、
・フード・インクという映画について
・食料戦争の内側
・私たちができる事
に分かれる

この本で注目したいのが、単なるファストフードの危険性と利潤追求型企業の独占に
よる食の危なさを訴えているだけでは無い事である。
この事は、本書の中で著者が何回も言っている言葉である。

知る事の権利、それを隠そうとする企業や政府、利潤をあげる事を第一義とする国際的
な巨大企業の為に多くの犠牲をこうむる一般市民や農業従事者がいる事の事実を正しく
伝えなければならないと感じた使命感が著者を動かしている。
本来、自由を勝ち取る為に独立したアメリカという国が本来ある姿でいて欲しいという
思いが感じられる。

ともすると、現体制批判を行う事で批判された企業からのスポンサードや支援する人達
の寄付を目的とした体制攻撃を行う、恐喝まがいの環境ビジネスが存在する海外において、
これとは一線を画す考えでこの映画は作られている事である。

食という人間の基礎となる大切な部分が、利潤追求を第一義とした一部の企業とそれに
結託をした政府のおかげでおかしな方向に向かってしまった事実を客観的な目で見つつ、
これに対抗する食の本来あるべき姿を求める個人・団体の活動の様子を紹介している。
まさに、これはアメリカにおける「スローフード運動」ともいえる。
もっとも、「スローフード運動」と違うのは、伝統を持った欧州の昔からある伝統食材
と料理を維持しようという運動に対して、およそ300年程度の歴史しかないアメリカ
で新しい伝統食材と料理とは何か?から始めなければならない模索を伴った運動になる
であろうとする点である。

なお「フード・インク」という映画を作るきっかけとなった事として「フード・インク」
という着目点で記事を書かないかと勧めたのが、「ローリングストーン」誌の複数の編集
者達だったそうである。
「今の時代の注目点」である若者の音楽をテーマにして発刊された「ローリングストーン」
誌の編集者が感じた新しい「今の時代の注目点」がこの食の問題なのかもしれない。




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空の写真 今月の本(2012)
面白かった本などを紹介します。
2012年に読んだ本の中からの紹介です。