究極の田んぼ

NO,007

■ 究極の田んぼ

  3月

著者:岩澤 信夫
出版:日本経済新聞出版社

現代の篤農家のお話である。
合鴨農法で失敗したのを契機に、海外の文献や新しい農法をいろいろと試してみる。
そんな中冷害が訪れ、著者の稲だけ元気に育ち、例年通りの収穫となった。
なぜだろうと考え、新しい農法「冬期湛水・不耕起栽培」に行きつく。

イトミミズを自生させる事でその排泄物が肥料がわりとなり、また不耕起と湛水に
より腐葉土から発生するメタンガスを抑える事が出来る栽培法は、一見無精な農法
に見えるが、継続的な循環農法でも有り自然に極力負担をかけない農法ともいえる。

これは、冷害に苦しむ農家にとって朗報となる事だと考え、その普及に乗り出す。
講演会を各地で行い、自然栽培研究会のNPOを立ち上げる。
現在の有機栽培の限界や、石油資源に依存する現代の農業のあり方に著者は疑問を
投げかける。将来、人口増加による食糧難と石油資源が枯渇する時に手に入らなく
なる燃料と化学肥料の代わりとなる日本の農業の生き残り策として、機械と肥料に
依存しない誰でも出来る自給農業の在り方について、様々なプランを提示している。

多くの考え方は、UKIが思っているものと重なっている。
UKIは片手間にまた細々と出来る範囲で考え、わずかながら実行しているつもり
だが、著者は使命感を持ち、生涯を掛け命を張って行動している。

誰でも出来る不耕起無農薬栽培、冬期湛水・不耕起栽培、水を殆どやらないSRI
農法、将来肉が手に入らない事を考えての大豆栽培、また循環型農法による農家と
市民とを繋ぐ事業など今やらなければならない多くのプランとアイデアが語られる。

ところで、手間の掛けない農業だが、なかなか普及が難しい。
その理由として、まめに手を掛けない農法が怠け者だと評判になる事や、強い作物
種でしか作れない不耕起無農薬栽培は、周辺農地の作物に雑草の種を運んでしまう
という問題がある
が、今後作物をつくらないが売りたくなく、また地元に住んでいない後継者により
農地集約がなかなか進まない放棄された農地が多くなる事を考えると、ある時から
著者の提唱している事が当たり前にように実践されていくだろうと思われる。

著者がこの農法に巡り合いさらに色々と考えていく中で、これからの日本の農業の
在り方にへと繋がっていく。元々、日本の農業の将来は?と考えて実践して始めた
事ではなかったのだが「これは?」と考えていく著者の姿勢には、高齢にもかかわ
らず「なぜ?どうして?」という旺盛な好奇心によるものが大きい。
著者のこの姿勢には、学ぶものが多い。




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2012年に読んだ本の中からの紹介です。