アンティキテラ

NO,009

■ アンティキテラ

  8月

著者:ジョー マーチャント
訳者:木村 博江
出版:株式会社 文芸春秋

旧約聖書の中でUKIの好きな言葉がある。
「ダビデの書」の冒頭、預言者でもあるダビデの王の言葉で、今、発見したと思った
ものはかつて存在した。初めてのものだと思っているものは、私たちが知らない遥か
な過去にも存在していたものである。
というくだりがある。
本書を読んでまず、感じたのがその事である。

本の副題に「古代ギリシャのコンピュータ」とある。それがどんなものだったのか?
物語は始まる。
潜水具が発明され、深い海に潜る事が出来るようになった20世紀の初頭、1900
年、ギリシャ半島とクレタ島の間、アンティキテラ島の海底の難破船から見慣れない
物が見つかった。それは、複数の精密な歯車で構成された置時計のようなものだった。
難破船から見つかった、金貨の年代から紀元前のものであると推測されるその装置は、
その使われている工作技術から、中世に作られ始めた時計よりもさらに精巧に出来て
おり、その技術は、およそ1000年以上隔たりがあるものだった。
そんな、装置の魅力に嵌った何人かの男の話である。

最初に手がけたのはレディアレス、歯車にあった古代ギリシャ語を解読し魅せられた。
彼は「アストロラーベ」という天体を観測し方位を探る機械だとした。次は、レーム
彼は天体運行儀と推測した。次がプライス、当時最新のレントゲン写真を撮って詳細
を調べ、復元させた。この複製品が話題となり、多くの人に知られる事となる。
さらに年は過ぎ、ブロムリーとライトにより正確に復元され、機械の文字板の文字が
らせん状である事を突き止める。さら次が、プライス、彼により日食や月食の起こる
日や場所、さらに、複数の暦に変換できる機能を併せ持った機械だという事が、解明
される。

一時はオーパーツではと色物に落ちた時期もあったが、解明されて驚異の機械として
現在に至っている。
この話はつい10年程前、かなり話題になったらしいが本書を読むまで知らなかった。
かつて、今は知られない遥かな昔、現在よりも高度な技術と思考を持った人たちが、
いたのかもしれない。現在の繁栄した社会もほんの100年くらい前までは、飢えた
人々が沢山いた時代だった。現在でも飢えた人々は多いし、戦乱が無い時は無い。
この時代もいつまで持つかはわからない時代、成長し続けるという神話は終わったの
かもしれない。

そういえば、「スターウォーズ」も「A longlong time a go」で始まるなぁ〜。





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